【品川区】夜中に10回以上「トイレ連れてって」で同居困難となった義娘さまの入居相談
- 小野寺 柚月

- 10月24日
- 読了時間: 9分

※相談事例は全てご相談者さまの了承を得て記事化しております。
同居のお義母さまのADLが低下、在宅介護が限界に
一つの入居相談が決まって安心していたとおもっていたらLINEでご入居相談が入りました。
品川区東大井にお住まいのご家族から、ホームへのご入居相談をいただきました。
ご相談者は60代の義娘さまで、お義母さま(92歳)が夜中に何度もトイレに起きるようになり、見守りが難しくなってきたという内容です。
これまでお義母さまは、長年慣れ親しんだ自宅で自立した生活を続けてこられました。
家事も一通りこなされ、身の回りのこともご自身で行えるほどお元気な方でしたが、90歳を過ぎたあたりから徐々に身体のバランスが崩れやすくなり、最近では歩行器の使用が日常的になったため、義娘さまと旦那さまがお義母さまの実家に移り住むようになっていました。
一番の問題点が夜間のトイレでした。
この1年でお義母さまのトイレの回数が増えたことで義娘さまの見守り時間がおおはばに増えてしまったため、義娘さまの在宅介護が限界になってしまったのです。
夜中のトイレ介助は平均10回。義娘さまの心身負担が限界に
義娘さまは、スーパーのパートをしながら在宅介護を続けておられます。
日中はデイサービスを週1回利用しているものの、夜間は完全にご自身の見守りで対応していました。
夜間のトイレ事情について伺いました、すると、
「夜中に“トイレお願い”と声をかけられるたびに起きて介助するんです。
お義母さまが転ばないように手を添えて歩行器を押して、またベッドに戻る。
朝までに9回も10回も起きる日が続くようになって、こちらの体力が持たなくなってきて…。」
義娘さまは疲労の色を隠せず、介護疲れの兆候が見え始めてました。
旦那さまも今の状況が続くと奥さまが倒れてしまうと心配してます。
ただ、お仕事があるため夜間のトイレ対応はできません。
在宅介護の限界が見え始めたので、「夜間も見守ってくれる環境に移るべきかもしれない」と考え、当社へご相談くださいました。
お義母さまの生活状況とADL(生活動作レベル)
お義母さまの基本的な生活能力(ADL)は次のとおりです。
【お義母さま:92歳】
食事:普通食(通常食)
歩行:歩行器と車いす(居室内歩行器、外出は車いす)
排泄:見守り(転倒があったため)
更衣:一部介助
義歯:総義歯
認知症:ナシ
要介護:要介護2
備考:夜間のトイレ頻回・転倒リスク高め
食事や排泄行為は自立されていますが、夜間の動作には不安定さがあり、見守りや部分介助が必要な状態です。
特に、トイレまでの距離が5メートルほどあること、廊下の照明が十分でないことなども転倒リスクを高めていました。
過去に何度か一人でトイレまで行き、転倒した経緯があるため義娘さまが日中でも夜中でもついていくことになってました。
ご家族の思い:「最期まで自宅で」と「安心して眠りたい」の狭間で
義娘さまは当初、「できる限り自宅でお義母さまを見たい」と強く思っていました。
しかし、夜間のトイレ付き添い対応が続くことで自身の睡眠時間が削られ、日中の仕事にも影響が出るようになっていました。
「お義母さまは“夜中に迷惑をかけたくないからひとりで頑張る”と言うんです。
でも、放っておくわけにもいかない。
お互いに気を遣いながら夜を過ごしているうちに、どちらも休めなくなってしまいました。」
このようなケースは、在宅介護を続ける多くのご家族に共通しています。
介護を続けたい気持ちはあっても、「夜の見守り」という一点が継続の難しさを決定づける要因になることが少なくありません。
睡眠導入剤を使うも2時間で覚醒、オムツは本人拒否
トイレ頻回の問題は介護では珍しいことではありません。そのため、対応策もしっかりと確立されていたりします。
例えばこんな感じです。
・夜間のトイレ頻回をふせぐため、眠前に睡眠導入剤を飲む
・夜間のみオムツやリハビリパンツを履いて失禁対策をする
そうした対策はすでにされているのか疑問がわきました。
そこで、義娘さまに質問すると、どちらもご存じでしたがうまくいかなかったそうです。
それぞれに理由がありました。
まず、寝る前に睡眠導入剤を飲む対策ですが、飲んでも2時間で目が覚めてしまいそこからトイレ頻回になってしまい失敗。
(日中のほとんどをベッドで寝てテレビをみたり、眠ったりしているため昼夜逆転が起きてしまっているのかもしれません。)
次に、オムツやリハビリパンツを履いて失禁対策をする件ですが、これも結果的に失敗してしまいます。
お義母さまはこれまで布パンツしかはいたことがなく、リハビリパンツをはくと、「ごわごわして気持ち悪い、これ嫌だ」と拒否されてしまったそうです。
小さめのパッドも試したのですが、パッドが当たる面が気持ち悪く、やはり拒否されてしまいました。
取れる対策は取っていたのです。
その上でのご入居相談だったのです。
今回はすでに対策済でしたが、こうした質問をすることはとても大切なことなんです。
ご相談者が「自宅での介護を続けたい」という場合はとくに重要なんです。
施設探しの方向性:夜間体制を重視した施設選び
いくつかの夜間対策を行い、それがうまく機能しないため最後の手段として「入居」
という選択肢を選ばれた義娘さまの気持ちが理解できました。
ここからは施設探しにポイントを移します。
入居相談員として、今回のケースでは、
「夜間介護体制の充実」
夜間10回以上言われる「トイレ連れてって」トイレ頻回で同居が困難になるほど心身が辛くなってしまった義娘さまからの入居相談。出来ることはすべてやって失敗。もう施設に入れるしか方法がないと決断。トイレ頻回に合う施設選びのポイントなどを詳しく説明
を最優先に施設選定を進めました。
夜間帯に十分な夜勤スタッフさんが常駐していること、トイレまでの導線が短く、誘導や見守りが行いやすい構造であることを重視。
また、お義母さまのADLをできるだけ維持するため、リハビリやレクリエーションでの運動に力を入れている施設の発見も大切なポイントでした。
義娘さまから、できるならば介護付き有料老人ホームでお願いしたいとの条件を頂きました。(実際には3つの運営会社名からの施設探しですがそこは伏せます。)
品川区・大井町エリアには、24時間看護・介護対応の介護付き有料老人ホームが複数ありますが、夜間スタッフの配置人数や対応方針には施設ごとに違いがあります。
そのため、義娘さまには実際にいくつかのホームを見学いただき、スタッフの対応や居室の明るさ、トイレの位置などを細かく確認していただきました。
最終的には、60人規模で、夜間3名の介護スタッフさんが常駐し、トイレ誘導や巡視をこまめに行うホームへの入居を決定。
実はこれ会社単位で考えるのではなく、施設単位で考えないと後々、トラブルになったりします。
人員不足だったりすると、一時的にせよ、人員配置基準という厚労省が決めた基準通りになっていない施設もあるのです。(当社はこういう施設への紹介は行いません)
また、要介護度が低いご利用者が多い施設などでは、夜勤者の数を減らして日勤のシフト数を増やすといったシフト構成をする施設もあります。
人員配置基準を守っていれば違法ではありませんが夜勤時の事故リスクが高まることを否定はできません。
そのような施設は今回の提案から削除しなければなりません。
品川区は老人ホーム激戦区の一つでもあるためリスト作成はそこまで大変ではありませんでしたが、夜勤体制をしっかりとしている施設を見極める作業には時間がかかりました。
リストが完成したため義娘さまにお渡しし、興味のあるいくつかの施設について見学依頼をだしました。
見学から入居まで
義娘さまといくつかの施設を見学しました。
全ての施設を見学した後、義娘さまに感想を聞いてみましたすると、
「どこもよそ行きの感じがしました。実際にどんな対応をしてくれるのかというのは正直わかりませんでした。お客様がきているからちゃんとしようって感じに見えました。」
かなり辛らつなコメントだとおもいましたが、介護業界特有の大げさすぎる敬語や歯の浮くようなことばのせいだろうな、と思いました。(これは私が介護業界に来た時にも感じたことでした)
施設に対して不信感をもたれたのではないか、と感じましたが翌日、義娘さまから見学に行ったある施設について入居手続きを取ってほしいというお電話をいただきました。
入居後の変化とご家族の安心ホーム選び
今回も空き部屋があったため即入居できる状態でした。
必要な書類などをすべて集めるなど、入居相談員として協力できることをすべて行い、入居日が決定。
ご入居はスムーズでした。
入居後すこししてからご様子を伺うお電話をしました。すると、
お義母さま「夜中に起きてもすぐ来てくれるから安心」
義娘さま「朝までぐっすり眠れる日々に感謝しかないです」
と、お義母さま・娘さま双方から安堵の声が聞かれました。
施設では、お義母さまの昼夜逆転をなおすような様々なプランが実践されていました。
たとえば、施設内では日中に軽い体操や音楽レクリエーションがあり、積極的に参加してもらうことで、日中の活動量が増え夜の眠りも深くなってきたということでした。
科学的な証明は難しいですが、お義母さまの生活リズムが整い、夜間の睡眠時間が増えてきたのではないでしょうか。
夜間のトイレ頻回についてですが、ご入居当時は一晩に20回前後、トイレコール(トイレに行きたいというナースコールの数)が鳴っていたようですが、最近では多くて5回程度とかなり減ったらしいです。
夜中に何度か起きてトイレに行きたくなった時にはナースコールを押せば、スタッフさんがすぐにサポートしてくれるため、逆に安心して眠れてると思う、と義娘さまは評価されていました。
結果として、今回のご入居紹介により、義娘さまから、
「仕事に集中できるようになった」
「母の笑顔が増えた」
とうれしいお言葉を頂けました。
夜間の見守りが必要になったら、早めの相談を
夜のトイレ頻回による見守りや転倒リスクの増加は、在宅介護のターニングポイントになることが多いです。
「まだ大丈夫」と思っていても、介護者の負担は少しずつ蓄積し、突然限界を迎えることもあります。
特に90歳を超える高齢者では、夜間の排泄・不眠・不安感が生活の質に大きく影響するため、早めの相談・対策が何より大切です。
介護施設への入居は「自宅を手放す」ことではなく、「安全と安心を確保するための選択肢のひとつ」だと私は思います。
私たちは、その思いを尊重しながら、ご家族と一緒に最適な形を探していきます。
在宅介護の「限界」は悪いことではない
今回のように、夜間のトイレ介助がきっかけで施設入居を検討されるケースは増えています。
在宅介護をやめることは悪いことではありません。
ご家族みんなが元気になるための選択肢だと思います。
なにより、「安心して支え続けるために介護の形を変える」と思うことが大切です。
在宅介護を続けてきたご家族ほど、「もう少し頑張れば」と考えてしまいがちですが、心身の限界を超える前に一度立ち止まり、専門家の意見をきいていただきたい思います。





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