
耳が遠くなってきた母
ホームページからご相談された大田区大森西にお住いのご家族さまからのケースとなります。
現在、お母さまは90歳で娘さまの家で同居しておりますが、2年ほど前から耳が遠くなり集音器を使っておられます。
幸いにも認知症を発症しておらず受け答えもハッキリしていますが、年頃のお子さまから一緒に住むのは嫌だと言われてしまっていました。
娘さまはこれまでにも何度かお子さまに、耳が遠くなったとしてもあなたのおばあちゃんなのだから尊敬しなさい、と伝えていました。
ところがお母さまがトイレで失敗してトイレを汚してしまったことがあったそうです。
それを見たお子さまがこれ以上、一緒に住みたくない、と毛嫌いするようになってしまったそうです。
トイレの失敗はその1回限りなのですがその印象があまりにも強かったためお子さまはお母さまに寄り付くこともなくなり、食事も別々に取るようになってしまったそうです。
娘さまは旦那さまとこの現状を何とかしないといけないと議論を続けていたそうです。
旦那さまはグループホームやショートステイを使ってみてはどうか、とアドバイスはしてくれたそうです。
そんな折、旦那さまから、
「年齢的に身体も弱ってきているのだから最後まで面倒看てくれる老人ホームにお願いするのはどうだろうか」
と言われたそうです。
老人ホームに入ることを想定していなかった娘さまは当初かなり困惑していたのですが、娘さまが家にいつかなくなってしまう危険性もあったことから熟考した結果、お母さまに相談することにされたそうです。
お母さまは老人ホームへの入居に対してかなり抵抗感があり、
「お前を育てたわたしを姥捨て山にすてるのか?」
と声を荒らげたこともあったそうです。
話し合いは平行線をたどるばかりでストレスもかなり溜まってしまったそうです。
ある日突然お母さまが
老人ホームへの入居話もすすまなく悩んでいた娘さまがキッチンで悩んでいる時、お母さまが椅子に座り、
「老人ホームに入ってもいいと思う。私もこの先どうなるか分からない。できることなら1か所で最後まで面倒看てくれるところがいい。」
と、仰ったそです。お母さまは日々悩んでいる娘さまのことを気にかけていたのだと思います。
ご自身で老人ホームを探そうともされたそうですが、施設の種類や費用などがあまりにもたくさんあるためご自身でどの施設がよいのか分からず娘さまにお話をされたそうです。
施設入居を受け入れてくれたお母さまの意向を受けてすぐに旦那さまと老人ホーム探しを始めたのですが、はじめてのことばかりで何から調べればよいのか分からずここでもストレスがたまる事態になってしまったそうです。
手始めにご自宅の近くにある老人ホームに連絡をしてみると現在、満床で予約待ちになると伝えられました。
使っていたショートステイの施設などにも相談するとその施設に営業に来た施設を教えてもらったのですが営業担当なる人物からお金ばかりで、今決めればキャンペーン価格の適用です、などと執拗に営業されてしまい信用できなかったそうです。
さらに、インターネットで調べても高級老人ホームの宣伝ばかりで費用が合わず希望の施設を探すことに疲れてしまったそうです。
そんな時に弊社の相談実例をみてご相談をされたそうです。
老人ホーム選びで重要視したこと
老人ホーム探しの前に弊社では必ずヒアリングを行います。何が本音なのかを聞き出すことが出来なければ最適だと言える老人ホームをご案内することが難しいからです。
ヒアリングではご家族さまから以下の条件がでました。
・ご自宅から1時間圏内(都内、神奈川のどちらかで探してほしい)
・看取りまで行ってくれる施設
・月額費用が25万円以下
・自立しているご入居者がいる(認知症ではないも含む)
都内で老人ホーム探しをしているご家族さまから出てくるよくある条件でした。
大田区は様々な形態の施設があるため探すこと自体は難しくありません。
ただ、相談員として看取りに関する条件があいまいな点が気になったためもう少しヒアリングをしてみました。
すると、身体の状態により施設を変わるようなことはしたくないことがわかりました。
一度入居したらそこで看取りまでしてもらいたいことが本音だと分かったのです。
お母さまは認知症もなく、杖歩行とはいえ足腰もしっかりしているためサ高住は選択対象となります。
しかし看取りまでとなると適切な施設選びをするために十分な施設数があるとは言えません。看取りが出来ない施設であれば転居の可能性が出てしまうからです。
今回のケースでは、介護付き有料老人ホームもしくは住宅型有料老人ホームが好ましいと考え、施設のピックアップをはじめました。
いくつかご提案できる施設が出てきたところで娘さまにご連絡し説明を行いました。
説明の場にはお母さまも同席されパンフレットを見ながらアレが良いコレが良いと楽しそうにしていたのが印象的でした。
ただ、その姿は娘さまに心配させまいとやせ我慢しているお母さまの想いのようなものも感じたため相談員として複雑な気持ちにもなりました。
お母さまは色々とお話をしてくれましたが施設での暮らしになったとしても、今の生活と同じような状況を維持したいのではないかと感じました。
老人ホームに入ってしまうと認知症のご入居者と同じように扱われてしまうのではないかといったことを心配されていたようです。
大森の住宅型有料老人ホームへ入居
今回のケースでは住宅型有料老人ホームをご提案しました。その中から3軒ほど興味がありそうなところが出てきたため見学予約を取り施設見学を行いました。
見学には娘さま、旦那さま、そしてお母さまが出向かれました。紹介会社として私も同席させていただきました。
どの施設も評判が良いだけあってしっかりとした対応をされています。
費用も条件内でまとまっていることから後は、ご家族さまがどのように考え結論を出されるか待つだけです。
3軒すべての施設見学を終えその日はそのまま解散となりました。
1週間ほどして娘さまからご連絡をいただき、お願いしたい施設があるとのご報告を受け、施設入居の手続きを行いました。
決定の理由を娘さまに伺ったところ、娘さまや旦那さまが考えていた施設とは異なる施設をお母さまが気に入っていたため本人の意思を尊重して決められたとのことでした。
ちなみに私もお母さまが選んだ施設が一番良いのではないかと感じていました。
ご入居者がお母さまのキャラクターと合うのではないかと感じていたからです。
入居日には私も施設にお伺いしました。
お母さまは少し緊張した顔つきをされておりましたが、吹っ切れたような感じもしました。
お母さまにご挨拶をすると、
「この度は色々とお世話になりました。こんどはここで楽しく生活していきたいと思います。お近くに来られた時には顔でも見せてください。人生は自分次第でどうとでもなるものよ。」
昭和、平成、令和と駆け抜けてきたお母さまだからこそ言えた言葉だと感じました。
老々介護や2025年問題など介護については暗い話題ばかりが続いていますがニュースとは違う側面もあります。
老人ホーム紹介という特殊な業種で働いていると本当に色々な体験ができます。
お母さまがご入居した後、娘さまに今回のケースを記事にして良いかご確認をしたところ、
「母が私のこともホームページにのるのかしら?楽しみね。と言っていたんです。もし可能であれば記事にしていただいた後、教えてください。母に教えてあげたいです。」
と記事化に対して快諾していただけました。
個人特定ができるような箇所を除いて記事化させていただきました。
改めて、この場を借りて御礼申し上げます。
また、この記事が同じように老人ホーム探しをされている皆さまに対して何かのヒントになれば幸いです。