
※相談事例は全てご相談者さまの了承を得て記事化しております。
在宅介護の限界を超えた
大船のショートステイ相談員から当社のフリーダイヤルあてに連絡が入りました。
緊急利用のお客さまを老人ホームにお願いしたいので受け入れ先を探してほしいというものでした。
実質的な介護は次女さまとお母さまで行っていましたが、介護の継続がかなり厳しく次女さまが精神的に参っているので相談にのってほしいということでした。
現在、91歳のお父さま、87歳になるお母さまと50代の長女さまの3人で生活をされています。
長女さまは障害を持っており介護が出来ませんでした。
お父さまは認知症がかなり進行しているとのことでした。
お父さまは要介護2でしたが室内で転倒し骨折してしまい現在は要介護4となっていることもわかりました。
これまでにデイサービスなどを使ってこなかったのかお伺いすると、連絡をしたことは何度もあったがその度に本人の介護拒否が強くサービスを受けずにご家族さまだけで在宅介護をするしかなかったそうです。
87歳になるお母さまと次女さまがお父さまと長女さまの面倒を看てきたのですが次女さまの介護ストレスが限界まで来ており、ケアが難しくなってしまっているため次女さまが介護できる状態に回復するまで症状を落ち着かせ、同時進行で施設探しをスタートしている現状ががわかりました。
当社の役割はお父さまの受け入れ先老人ホームを探すことと多職種連携を取り状況を改善することです。
老人ホーム紹介会社に持った不信感
今回のケースではショートステイ相談員と連携しています。
老人ホーム探しは今に始まったことではなく、かなり前から次女さまが動かれていました。
なぜ、施設選びが難航したのでしょうか。
次女さまにお話を伺うと施設紹介会社の残念な面が見えてきました。
実は次女さまは以前、別の老人ホーム紹介会社に相談して受け入れ先の施設を紹介されていました。
ところが紹介会社の営業があまりにも強く、不信感を持たれてしまい現在まで施設決定が出来なかったことが分かったのです。
老人ホーム紹介の相談員は車の販売やモノを売る仕事ではありませんし、営業マンでもありません。
ご家族さまが必要とされている情報を提供することが相談員の本質だと思っています。
しかし、営業成績として毎月、紹介件数を競うような紹介会社があることも事実です。
ノルマの達成のために入居を急がせるような営業をする会社があることも把握しています。
ご家族のためではなく、会社の成績のための仕事になってしまうのは残念なことです。
事情が把握できたので次女さまが老人ホーム探しをされていた時の条件などを伺いました。
お父さまのADLと危惧すべき点
お父さまのADLを伺いました。
【お父さま:91歳】
食事:普通食(通常食)
歩行:全部介助【車いす】
排泄:全部介助
更衣:全部介助
義歯:なし
認知症:重度 介護度:要介護4
【補足】
・介護拒否が強く排泄介助・更衣介助時に手が出る、叫ぶなどが確認されている
・過去に病院での受け入れを拒否されたことがある
慎重に考えるべきポイントがあります。
老人ホームではプロの介護士が適正な介護技術を使い日々の生活をサポートします。
認知症についても知識が豊富ですから対応方法も確立しています。
しかし施設理由により老人ホームを出なければならない場合があります。
以下のような場合は施設側から受け入れ拒否を申し伝えられることがあります。
・スタッフに対する暴言・暴力
・セクハラ行為
暴言は施設側もある程度許容してくれますが暴力については介護士にも危険がおよぶため施設側も迅速に対処してきます。
お父さまはこれまで介助中にケアする側に手を出すことがあるということなので程度を知る必要があります。
力の強い男性が手を出してしまうとケアしている介護士が怪我をする可能性があります。
認知症が進行している場合、年齢と比例しない強い力で抵抗することもあります。
私が介護士として現場で働いている時、手を強く握られて内出血を起こしたり、ひっかかれて出血したことがありました。
私だけではなく他の介護士にも手をあげていたため、施設として退居していただくことになってしまいました。
今回はそのような施設側の受入れ姿勢を加味する必要があると感じていました。
入居施設の条件
必須条件と充分条件を伺いました。
◆必須条件
・一時入居金:100万円以下※
・月額利用料:25万円以下
・看取り可 ※一時入居金0円プランがある場合はそちらを優先する。
◆充分条件
・できれば次女さまの自宅から30分圏内
最近の老人ホームでは複数の料金プランを持っていることがあります。
例えば一時入居金300万円+月額20万円のプランと一時入居金0円+月額25万円と2つのサービスプランを持っているなどです。
当然ですがプランによるサービスの差異はありません。
さらにお父さまの拒否時における手出しがどの程度なのかを施設側にも把握していただく必要があります。
今回ご提案する施設形態は介護付き有料老人ホームとグループホームになります。
早速調べてみるといくつかご提案可能だと思われる施設が出てきました。
早々にリストにまとめ施設の説明を行いました。
見学には次女さまとご主人さまがいらっしゃいました。
見学が終了し感想を伺うとご主人さまから、
「入居できるならこちらでおねがいします。」
と、即答されました。
事前にある程度、施設長と話はしていたためお父さまの現状は施設側も把握はしています。
しかしそれだけでは十分ではないと感じていたため一計を講じました。
ショートステイを使って介助時における暴力レベルの査定を行い暴力の解消と介護拒否の解消を計画しました。
ショートステイを使って老人ホームに慣れていただくことを最優先したプランになります。
認知症の方に「慣れ」があるのか?
といったご質問もあるかと思いますが、慣れはあります。
アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症など認知症にもいくつか種類がありますが、どれもご自身の置かれた状況を把握できないわけでは無いのです。
言葉によるコミュニケーションが難しくてもスタッフを認識していないわけではありません。
同じスタッフが介助することで相互に関係値が構築されてくるのです。
介護拒否を和らげるために
お父さまが老人ホームで安心して暮らしていただくためにはいくつかクリアしなければならないことがあります。
・介助時における暴力の解消
・介護拒否の解消
・帰宅願望の弱小化
まず、ショートステイ相談員から介助時の拒否について情報の連携を行い、入居検討施設に情報共有を行います。
そこでNGが出てしまっては次に進めなかったのですが施設長から受け入れは手出しの程度による、というお話を頂けたので次の段階に進みます。
今回のケースでは介護拒否の解消についてショートステイを利用している間にお父さまに介護慣れをしていただくプランを作りました。
これまで介護サービスを一切使ったことが無いため帰宅願望も強く出ることが想定されますが、こちらもショートステイを使うことで徐々にお父さまに理解していただくようにします。
施設長とケアマネジャーと綿密に打ち合わせをし施設入居の為のプランを練り、ショートステイ時におけるお父さまの行動などについても行動プランとして作成しました。
大船の老人ホームでの入居をスムーズにした秘策
完成したプランはご家族さまの了承を得て実行に移します。
ショートステイ相談員と綿密な打ち合わせを行い全5回のモニタリングを行い、お父さまに老人ホームでの生活に慣れていただくプランとしました。
初回のモニタリングは施設側、ご家族さまどちらにとっても状況の確認が主目的となります。
1週間程はお父さまが早い段階から帰宅願望と思われる行動をとっていたことがわかりました。
介護拒否については改めて入浴時及び排泄時に強いことがわかりました。
問題になっていた排泄介助時の暴力についてですが、手をつねる、手を強い力でにぎる、頭を叩くなどが確認されました。
幸いだったのは施設長からは、手が出ることは確認できたが許容できる範囲です、と説明を頂けたことでしょう。
初回のモニタリングでは次女さまに、最低でも一度は面会と受診に行ってください、とお伝えしました。
施設に行くことでその施設の雰囲気がわかるようになるからです。
また認知症に対する治療も不十分で薬の調整が必要でした。
見学はとても大切ですが見学だけでは見えない部分もたくさんあります。
面会に行くことは施設の日常を知る上でとても大切なのです。
ショートステイでの取り組みは順調に進み、モニタリングも2回、3回と行われました。
3回目のショートステイ時においてアセスメントを更新しました。
プログラムの骨子である以下について更新された内容を下記します。
・介助時における暴力の解消
>当初懸念されていたほど暴力行為が深刻ではないことがわかりました。
当初よりも排泄時における拒否が少なくなってきました。
その日の機嫌にもよりますが以前ほど大きな拒否がなくなり、排泄時に笑顔でスタッフに話しかけるなどの変化が確認されました。
・介護拒否の解消
>以前は入浴時のバイタルチェックから浴室に行った瞬間から拒否があったのですが、日によって拒否が出なくなってきました。
またお風呂上りにスタッフに対して「ありがとう」といった発言が出てくるようになりました。
・帰宅願望の弱小化
>以前は一度、帰宅願望が出てしまうと5分間隔で繰り返し立ち上がろうとしたり、そわそわすることが確認されていましたがスタッフが丁寧に接することで立ち上がり回数が減少してきました。
また、帰宅願望が一番強く出るのが午後4時前後であることがわかってきました。
当該時間にいつも以上に見守りをすることで転倒リスクを軽減できました。
全体を通してお父さまが施設での生活に慣れてきたと判断できました。
ショートステイ相談員と話し合いを行い、本入居の準備が整ってきたことを確認し、ご家族さまにその旨をお伝えしました。
お父さまと面会を行ってきた次女さまも施設にお願いできる可能性が高くなったことから介護疲れが少しづつ解消されてきたと仰っていましたのでご家族さまからの了承のもと本入居への手続きを開始しました。
2ヶ月目のショートステイ終了後からそのまま本入居へ移行する手続きを行いお父さまの施設入居が完了しました。
現時点で施設側、ご家族さまどちらからも大きなトラブルに至っていないことが確認されましたので入居に関するプログラムはクローズとしました。
ただ、本入居後でも何かあればご連絡ください、と次女さまにお話をし次女さまのストレスを軽減するようにしました。
今回のケースでは、環境の変化に順応していただきながら各種拒否を解消するため、専門知識を持つプロがアセスメントを更新しながらお父さまがリラックスした雰囲気で生活できる環境作りをしました。
多職種が集まって知恵を絞りながら計画プランを作ることで認知症のお父さまが安心して生活できる環境を作っていきました。
介護の世界では多職種連携という言葉があります。
ナースと介護士が連携してご入居者様にとって何が最適であるかなどを考えます。
また、理学療法士(PT)と連携してご入居者様の身体的な能力の確認と目標などを作り込むこともします。
今回は当社相談員とショートステイ相談員、施設と3社が連携していますから多職種連携となります。
在宅介護において認知症ケアはとても重要な課題となります。
今回行った計画プランをご家族さまだけで組み立て、実行するのはとても大変だと思います。
また、いまだに老人ホームは高い、老人ホームへ入居することは介護放棄につながるといった印象を持たれているご家族さまが多いのも事実です。
老人介護施設は日々、新しい理論を取り入れ、介護技術を更新するだけではなくご入居者さまが安心して生活できるかを重要視したサービスを提供しています。
これらの更新には当然ながらお金がかかります。
しかし、以前のように高い料金ではなくても一流のサービスを提供している介護施設もたくさんあります。
まさに企業努力のたまものといえます。
介護業界は日々進歩しています。
最後になりますが在宅介護を続けているご家族さま向けに、認知症ケアに関する考え方についてご説明します。
パーソン・センタード・ケア
イギリスで生まれた認知症ケアにおける現代理論の一つです。
理論が生まれる前まで認知症高齢者は「何も理解できない人」「おかしな行動をとる人」と考えられていました。
そのため介護施設は施設都合で排泄介助、入浴介助、食事介助などを行い効率化をはかっていました。
理論の提唱者であるトム・キッドウッドはこの点に疑問を持ちました。
※トム・キッドウッドは現代の認知症ケアの基礎理論を作ったと言われる人物です。
施設側の都合ではなく、認知症の方ごとの生活習慣、性格などに着目しその人の視点、立場に立ってケアをすることを理論化しました、これがパーソン・センタード・ケアです。
パーソン・センタード・ケアでは心理的ニーズを5つに分類しています。
自分らしさ
結びつき
たずさわること
共にあること
くつろぎ
5つの分類に沿ってケアをすることで認知症の方が求めているニーズを理解し実現するようにします。
では実際に介護現場ではどのように活用されるかについてご説明します。
パーソン・センタード・ケアは理論です。
理論を実践するために介護現場ではDCMという作業を行います。
※DCM「Dementia Care Mapping」日本語では認知症ケアマッピングと呼称します。
実際のDCMでは認知症の方をグループ分けし一人当たり6時間以上の観察、5分ごとの記録を行いますが在宅介護においてそこまでするのは大変だと思います。
そこで実際の在宅介護で実績すべき点を簡潔にまとめました。
実践できるパーソン・センタード・ケア
認知症ケアを実践する上で以下のことに意識を向けてみてください。
そして気づいた時に紙にまとめてみてください。
・本人が何をしているか、どんな発言をしているか
例)
立ち上がり行動を繰り返している
身体に触れると怒り出す
テレビに向かって何かを発言している
机を叩いている
・本人の状態の確認
本人と関わった際に感じた状態について記録します。
本来は6つに分類されますが3つにしました。
・良い
・いつも通り
・悪い
・ケアに対する本人の反応
ケアをした時の認知症の方の言動について記録します。
例)
リハパンを下ろしたら怒った
トイレ介助が終わったら機嫌よくなった
ずっとこちらを見て何か話したそうだった
こちらが怒ると相手も怒った
こちらが笑うと相手も笑った
この3つを日にちごとにまとめてみてください。
そしてある程度記録がたまったら見返してみてください。
そうすると認知症の方の行動が体系化できてきます。
100%把握することが難しくても、もしかしたらこういうことかもしれない、という気づきが出てくることが大切なのです。
認知症ケアにおいて一番の問題は言語コミュニケーションが取れないことによるすれ違いです。
パーソン・センタード・ケアを実践することで、相手はこう思っているかもしれない、と介護する側が思えれば一定の意思疎通が達成できたと言えます。
状態を把握することで日々の認知症ケアをどのようにすればよいかが見えてきます。
パーソン・センタード・ケアを実行することは認知症ケアに対する知識と同時に介護する側のストレスを緩和する効果もあるといえます。
それでも在宅介護に行き詰ってしまっていると感じている方は以下にて無料相談を行っております。
ご利用に際しご質問を頂くことが多くなってきたので当社が無料相談でお約束していることを下記します。
当社の無料相談のおやくそく
【1】ご相談は完全無料で費用が発生することはございません。
【2】ご紹介した老人ホームにご入居を決定されても成功報酬や紹介費などを頂くこともございません。
【3】ご紹介した老人ホームにご入居頂かなくとも費用が発生することもありません。
【4】過度な営業行為などは一切おこないません。
ご利用に際し、いかなる場合においても費用が発生することはありません。
間違いのない老人ホームのご入居先を見つけていただくために当社を活用いただければ幸いです。
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