※相談事例は全てご相談者さまの了承を得て記事化しております。
認知症を発症したお母さま
5年ほど独居をたのしまれていた84歳のお母さまが会うたびにおかしなことを言うようになってしまった。
娘さまはお母さまの認知症を疑い、かかりつけ医に相談しお母さまの症状を診てもらいました。
認知症の疑いがあるので認知症検査をするように言われた娘さまは地域包括支援センターにご相談。
お母さまに認知症と言わずに年齢による健康診断という名目で認知症検査を行うと認知症を発症していることが判明しました。
このまま認知症が進行して徘徊などになってしまうと危険だと判断した娘さまはお母さまに老人ホームに入ることを勧めました。
しかし、お母さまは断固拒否、そして感情をむき出しにして怒ったそうです。
お母さま「私をボケ老人と一緒にしないで!私は普通にこのままの生活をつづけたいの!」
認知症の症状などを学んでいた娘さまはお母さまの感情的な発言を受けて、認知症が進行していることを確信されたそうです。
ご親族でお母さまを練馬区の老人ホームに入居することを話し合いました。
ご親族も老人ホームへの入居に対して反対意見が出なかったため娘さまは老人ホーム探しをスタートされました。
老人ホームへの入居理由は慎重に
娘さまは、地域包括支援センターに老人ホームの紹介を頼んだそうですが断られてしまいます。
そこで、インターネットを使い老人ホームの紹介会社にご相談をすると練馬区のご自宅から近いところにいくつかの介護付き有料老人ホームを紹介してもらったそうです。
見学を終え、よさそうな施設が見つかりましたがお母さまは老人ホーム入居を頑なに嫌がっています。
施設長と相談し、ご家族さまが旅行に行く間だけ施設で我慢して欲しい、という理由でご入居に成功しました。
ご家族の旅行でショートステイを使われることはよく知られていると思います。
しかしこの理由、実は施設入居に前向きではない親御さんを施設に入居する際の説明としても、よくつかわれます。
ご入居後にトラブルになる確率がとても高くなるのでこの言い訳を使おうと思われているご家族さまは気を付けてください。
たいていの場合、ご入居後に強い帰宅願望が出ます。
お母さまもご入居後、1か月で強い帰宅願望が出始めました。
入居後、1週間目で始まった帰宅願望
お母さまはご入居当初、施設を楽しんでおられました。
他のご入居者さまとカラオケを歌ったり、中庭を散歩するなどして施設生活を満喫されていました。
しかし1週間が経過すると、帰宅願望が出始めたそうです。
夕食前の時間帯になると受付に来て、自宅に帰ります、お世話になりました、と挨拶をするようになったそうです。
保証人さまから外出、外泊申請が出ていませんのでお母さまは施設から出ることが出来ません。
お母さまは夕方になると毎日、事務所にやってきますが外に出ることはできません。
お母さまは施設をホテルだと思っていたのです。
しかし、出られないことが分かると、次第に感情的になり始めたそうです。
入居1か月後の帰宅願望
娘さまが久ぶりに面会に行くと、お母さまの様子が明らかにおかしいことに気づかれたそうです。
お母さまは娘さまに対して、
お母さま「お父さんが待ってるから家に帰ろう。ここはもういいよ」
と言われたそうです。旦那さまはすでに他界されており、そのことはお母さまも知っていたはずでした。
娘さまはお母さまの認知症が進行していると思われたそうです。
それにしてもお母さまの発言が鬼気迫っており気になっていたそうです。
面会の後、施設長に今のお母さまの状況を包み隠さず教えてください、と伝えたところ施設長がお母さまの居室担当の介護士を呼び、お母さまの日常についての説明を受けたそうです。
ご入居から1か月が経過し、お母さまの帰宅願望は日増しに強くなっていたことが分かりました。
時間に関係なく、上着を羽織り荷物を詰め込んだバッグを持って施設の正面玄関そばをうろうろするようになっていることが説明されました。
スタッフが声掛けをしても、
お母さま「ほっといてください。自分のことは自分でなんとかしますから」
と、スタッフのいうことに耳を傾けることをしない日が多くなってきたということでした。
感情的な発言が目立つようになり、お風呂や食事のお誘いをすると、
お母さま「そんなのいいから出してください!ほんとにかえしてー」
と、スタッフにイライラをぶつけるようになり大声を出すこともあるそうです。
また先日には、面会に来た他のご入居者のご家族さまが帰る際、後ろにくっついて一緒に出ようとする行為があったことも説明されました。
スタッフが気づき慌ててお母さまを止めると、
お母さま「たすけてください!たすけてください!だれかー!」
と、大きな声でドア外に向かって叫ばれたことも説明されたそうです。
行動制限によるストレスを緩和するため、スタッフがお散歩にお誘いすると大層喜び、上機嫌で歩かれていたのですが施設に戻ることが分かると、歩いている人に声をかけはじめ、
お母さま「警察に連絡をしてください。私はあそこの建物に閉じ込められてます。私の名前は〇〇です。お願いします、お願いします」
と、大声を出されたそうです。
娘さまは説明を受けて絶句されたそうです。
施設長はもう少しすると帰宅願望も小さくなるかもしれないので様子をみましょうと言われたそうです。
それでも帰宅願望が強い場合は感情を抑えるお薬を服用することも話されたそうです。
娘さまはお母さまの現状を知り、同居も考えたそうです。
しかし、家族の同意が得られず老人ホームにお願いするしかなかったそうです。
そんな時に施設から電話がかかりました。
施設から強制退去の連絡
面会でお母さまの実情を伺ってから数日後、施設長から一本の電話がかかり、施設に来ていただきたいと言われたそうです。
娘さまが施設に行くと施設長から退居の話をされたそうです。
施設長「先日、お母さまが居室にあるコップをスタッフに投げてスタッフが怪我をする事故が起きました。また、申し上げにくいのですが暴言もかなりひどくなっており、お金を払って牢獄に入れられてる。人権がないがしろにされてることを世間に公表しなくちゃ、と他の入居者さまから携帯電話を借りようとされることもありました。」
施設長「私どもも精一杯お世話してきたつもりですが暴言や暴力は施設として容認はできません。これ以上、お母さまをお預かりすることは難しいと判断しました。」
娘さまはウスウスそうなるんではないかと思っていたそうです。
退居日について伺うと、転居先が見つかるまで待ちますが、1か月ほどが限界です、と言われてしまいました。
そんな時に当社の転居に関する記事を見て無料相談にご連絡を頂きました。
田柄のデイサービスと訪問介護によるケア
娘さまからお母さまの現状をヒアリングしましたが、すぐに転居先の老人ホームを探すことはできないと判断しました。
お母さまは認知症により短期記憶が維持できないのですがすべてを忘れてしまうわけではありません。
大切なことや自分の興味のあることは覚えています。
今回の件であれば、自宅に戻るという強い想いは一日も忘れていませんし、施設の外に出るためならどんなことでもする行動力もあります。
この状態で別の老人ホームにご入居しても同じように暴力、暴言になり退居となってしまうことは明らかでした。
幸いにもお母さまの田柄のご実家は処分されておらずまた、娘さまのご自宅から自転車で5分のところでした。
そこで、施設を退居した後、お母さまのご実家に戻り、デイサービスと訪問介護でケアをするという提案書を作りました。
お母さまは認知症を発症しておりますが身体介助が必要なわけではありません。
また、実際には徘徊が始まっているわけでもなければ、転倒しているわけでもありません。
見守りにより生活状況をしっかりと把握することが大切であるとご説明いたしました。
当社の見解として、お母さまは介護付き有料老人ホームにご入居せずとも生活できると判断しました。
ADLが下がり身体介護が必要になるようであればまた、施設入居を検討すればよいのではないでしょうか、と補足いたしました。
娘さまからご親族に提案書を連絡していただき、親族間でお母さまを見守るということで了承も得られました。
ご親族の見守りネットワークが出来たことを受け、認知症をよりよく知るためにパーソン・センタード・ケアについてご説明をしました。
パーソン・センタード・ケアは理論ですから、どうやって実生活で活用するかについてご説明をしました。
パーソン・センタード・ケアの実践については「【大船】病院からも入院拒否、在宅介護の限界により老人ホーム探し」をご確認ください。
老人ホーム入居のタイミング
独居が難しくなってきた方や認知症の進行による危険リスクの回避などにより親御さんの老人ホーム入居をご検討されるご家族さまは多くなっております。
特に首都圏などは夫婦共働き、再就職による就業年齢の高年齢化などにより同居が難しいケースが多くなっております。
施設入居が増えている裏側で入居トラブルや入居タイミングに関する問題が大きくなってきています。
老人ホームの入居タイミングはご家族さまの事情だけではなく、ご入居者さま本人の事情も考慮しながら進めなければトラブルになってしまいます。
特に認知症を発症しても身体的には自立している高齢者や、軽度認知症の場合はご本人の判断能力などを考慮しながら慎重に入居タイミングを計らなければ暴言、暴力などにつながる可能性があります。
暴言・暴力・セクハラはどの施設でも強制退去になります。
老人ホームは施設としてご入居者さまの安全を担保しなければなりません。
そのため過剰ともいえるような安全対策を施します。
それは行動制限にも継がるため、今回のように自由が制限されたことによって強い反発を生んでしまうこともあります。
インターネットで調べると、老人ホームは外出、外泊は基本的に自由、というサイトがたくさん出てきます。
間違ってはいません。
ただ、介護付き有料老人ホームで考えると書かれているイメージとはかなりかけ離れていると言わざるを得ません。
私が働いてきた介護現場で、ご自身だけの自由外出が認められているご入居者は全入居数の10%もいないです。
もっと言えば50人前後の施設で3人もいれば多い方でした。
特にお母さまのように認知症を発症している場合は安全上の問題などから外出が厳しく制限されます。
ある程度認知症が進行しているご入居者さまはあまり強い帰宅願望にはなりませんでした。
しかし、今回のお母さまのように病識が無く、判断能力もある軽度な認知症の方は強い帰宅願望が出ていました。
そして入居日数によって小さくなることはありません。
あきらめるまで根気よく、という言葉を使う施設もあるようですが危険な発想だと思いますし、お母さまのようなご入居者さまは帰宅願望が小さくなることもありませんでした。
少しだけ考えてみてください。
自由を楽しむことが出来る自立した方、自由に買い物に行っていた方が入居した途端、施設から出ることが出来なくなってしまったらどうでしょうか?
ご入居する方の尊厳も守りながら進めなければならないのが入居タイミングの難しさです。
当社では軽度認知症や自立している高齢者のご入居相談についても無料相談窓口を設けております。
いかなる場合においても費用が発生することはございませんので安心してお問合せください。
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