※相談事例は全てご相談者さまの了承を得て記事化しております。
まずはじめに
今回の記事についてご相談者さまから以下を頂きました。その点を踏まえて読んでいただければ幸いです。
息子さま「今回、母に施設を紹介していただいたことも含めてやり取りをすべて記事にしてもらって構いません。家族を老人ホームに居れるというのはきれいごとだけではないと思っています。私と同じような人はいると思います。そういう人たちに読んでいただきたいです。」
お母さまと息子さまご家族の関係
きっかけは最近当社がスタートしたLINE相談でした。
お母さまを老人ホームに預けたいので色々と相談をしたいということでした。
ご相談者さまは息子さまで50代半ばです。
アドバイスを記録として残したいのでLINE相談でのやり取りを希望されていました。
お母さまと息子さまの現状についてご説明します。
・色々な事情から同居はできない
・これまで母は一人暮らしだが認知症を発症したので独り暮らしはムリと判断
・面会などに行くことはないのでそのつもりでアドバイスをしてもらいたい
・成年後見人制度を利用する
・お金で片付けられるならばそうしたい
お母さまは学歴やブランド志向が強く、認知症前にはことあるごとに奥さまに対して学歴差別や身に着けているものについて意見を言っていたそうです。
それはお孫さまについても同じでした。
お母さまはお孫さまが慶応の幼稚舎に入学することを希望されていました。
しかし、奥さまは小学校から私学に行く必要性を感じていません。
息子さまも同様に私立の小学校に行く必要性を感じておりません。
お母さまはかなり強く反対をされたそうです。
お金の面で心配なら全額、私が出す、とまで言われたそうなのですが、息子さまご夫婦にとってはお金ではなく育て方の問題です。
このころからお母さまが息子さま、奥さまに対して厳しく当たるようになったそうです。
お孫さまの中学受験ではお母さまが希望する中学校に入学させなかったことについて罵詈雑言を言われたそうです。
そして年始や行事などで会うたびにお孫さんの学校について、〇〇家の人間が行くような学校じゃない。これじゃ孫がバカになっちゃうし、非行に走る可能性だってある。今からでも遅くないからなんとかしなきゃ!と、ことあるごとに連絡をしてきたそうです。
決定的だったのはお孫さんが就職をした時です。
お母さまは財閥系のある会社に就職するように強く言ってきたそうですがお孫さまの志望は老舗のメーカーであり、財閥系の会社ではありません。
お母さまにとってその会社は納得がいくものではなく、お孫さまに対して何度も考え直すように言われたそうです。
それでもお孫さまの意思は変わりません。
そこでお母さまは一計を案じたのです。
お母さまはお孫さまを行かせようとしていた財閥会社の役員さんと知り合いだったのです。
ある日、その役員さんから息子さまに電話が入ったそうです。
役員さん「お宅の息子さんがウチに来たいから便宜をはかってくれと言われるんだが、適正試験の対策だけしてくれれば後は何とかするよ。」
息子さまは大慌てで、お孫さんはすでに本人が希望するメーカーから内定をもらっているということを伝え、丁寧に謝罪する事態になったそうです。
息子さまはお母さまに電話をすると、
お母さま「なんで断るのよ!私がどれだけお願いしたか分かってるの!孫だってきっとわかってくれるんだから。もう一回、お願いしてくる。」
と、電話を切ろうとされたそうです。
息子さまはお母さまに対して、これ以上自分たちの子供に干渉しないでほしいし、連絡を取ることも辞めてくれ、と伝えたそうです。
このようなことがあり、お孫さまもお母さまに対して良い印象を持ってはいませんでした。
母の認知症に合わせて入居相談
疎遠になってしまった家族関係ですがある時期から変化が起きます。
お母さまが息子さまに対して電話をかけてくるようになったそうです。
その内容がどんどんとおかしなことになっていくので息子さまはお母さまの認知症を疑いました。
最初お母さまは、お孫さまの小学校受験について電話をされたそうです。
大人になってちゃんとした人間になるためには小学校は幼稚舎にすべきだ、と電話をかけてきたそうです。
お孫さまはすでに就職をしており年齢も30歳近くなっています。
また、ある時には夜中の2時に電話をかけてきて、お孫さまの就職活動用にスーツをプレゼントしたいと話してきました。
お孫さまと一緒に銀座英国屋に行くから車を用意してほしいと言われたそうです。
そのようなことが何度も続き、奥さまにも電話をされるようになってしまいました。
奥さまには家族の仕来りについて話をしてくるとのことでした。
〇〇家は代々、医者家系です。息子は医者じゃないけど立派な大学を出ています。
アナタは短大しか出ていないんだから家庭のことをもっと頑張りなさい。〇〇家で短大なんて前代未聞です。孫の勉強の邪魔にならないように気をつけなさい。
と言われたそうです。
お孫さまはすでに就職をしており自立生活をされています。
明らかにおかしいのでかかりつけ医に診断してもらうと、認知症を発症していると思われるので認知症検査を受けるべきだと言われました。
結果はアルツハイマー型認知症でした。
奥さまは独居を辞めて老人ホームに入居すべきだと主張されたそうです。
息子さまもその意見に賛成でした。
ことあるごとにお孫さまの学歴や就職先について電話されることに悩まれていましたし、人を大学や身に着けているブランドで判断するお母さまに嫌気がさしていたのです。
息子さまはお母さまが認知症を発症したタイミングで当社の無料相談にお問合せをされたのでした。
光が丘近くの老人ホーム探しとお母さまのADL
施設探しにあたり必須条件と充分条件を頂きました。
◆必須条件
・光が丘から車で1時間圏内
・一時入居金:300万円以内
月額利用費:25万円前後
・看取り対応
◆充分条件
・特にナシ
施設はご自宅のある光が丘から車で1時間圏内ということでした。
一時入居金や月額利用費についてはお母さまの年金および貯金で賄える範囲で計算してほしいということでした。
当社でお母さまの利用年数を計算した上で一時入居金と月額利用費を算出しました。
お母さまのADLがこちらになります。
【お母さま:81歳】
食事:普通食(通常食)
歩行:自立
排泄:自立
更衣:自立
義歯:上義歯
認知症:アリ(アルツハイマー型)
歩行は自立歩行です。
排泄は布パンツをはかれており自立されていました。
更衣についても問題はありません。
認知症が進行することで徘徊の恐れなどもありますが現在はその傾向はありません。
同じことを繰り返し何度も電話で訊いてくることから短期記憶の維持が難しくなっていました。
尚、お母さまに病識はありません。
早速、光が丘近辺の老人ホーム探しをスタートしました。
看取りが必須条件となっており、今後認知症の進行により身体介護が必要になってくることが想定されたため、介護付き有料老人ホームでご提案する事にしました。
1週間ほどでリストが出来上がり、息子さまにご連絡すると光が丘近くの喫茶店でお話を伺いたいということになりました。
施設見学から入居
息子さまはリストを確認されたのち、2施設について見学を希望されました。
当日は息子さまご夫婦とお母さまが見学に来られました。
2つの施設を見学してから感想を伺うお時間を頂きました。
そこで息子さまから、
息子さま「決めました。最初に行った施設でお願いします。それと契約関係については成年後見人とやり取りをお願いします。後程、LINEに詳細を送っておきます。」
ということでした。
ご相談当初から面会に行くつもりはないとハッキリ仰っていることや、お母さまとご家族さまの関係が冷え切ってしまっており修復するつもりが無いことなどから、息子さまの決定を受けてすぐに手続きに取り掛かりました。
契約関係もスムーズにすすみ、入居日が確定しました。
当日は息子さまとお母さまのお二人で施設に来られました。
お母さまは楽しそうな顔をしていました。ご挨拶をすると、
お母さま「アナタがここを予約して下さったのね。ありがとうございます。主人が出張から戻るまでだから長居はできないけど楽しむつもりよ。主人は心臓内科の部長でね。みんなが先生先生っていうもんだから全国飛び回ってますよ。」
と仰り、笑顔で施設に入っていきました。
息子さまからLINEでご連絡を頂いたのは翌日の日曜日でした。
老人ホームに入居するということ
お話したいことがあるので改めて光が丘の喫茶店まで来てください、ということでした。
日程を決めて喫茶店にお伺いすると息子さまと奥さまがいらっしゃいました。
お母さまの入居についてのお礼とご本心を語ってくれました。
息子さま「入居日の母を見て相談員さんも何となくわかったでしょ。母はもう父が亡くなったことも理解できていないんです。でも、自慢だけは忘れないんです。もうそれが本当に疲れました。」
奥さま「そういう生き方をされた来たのは分かるんです。でも、だからと言って息子の学校や就職先にまで口を出すのは違いますし、私が短大しか出ていないということで馬鹿にされるのももう耐えられなかったんです。」
こういうことは通常、記事にはしません。
今回の件は本当に特別だと思います。
息子さまは続けました。
息子さま「正直なところ老人ホームに入ってくれたことでホッとしています。妻への言動もそうですし、私の息子(お孫さま)に対する行動も行き過ぎていて親子の縁を切ろうと思っていたくらいでしたから。」
息子さま「私たちが母に面会に行くことはないと思います。老人ホームから面会に来ないから退居とかはないですよね?」
家族が面会に行かないから退居というのはありません。
私が介護士として施設で働いている時にも、面会に一度も来ないご家族さまがいましたが退居になるということはありませんでした。
そして当記事の冒頭に書いたことが息子さまから伝えられました。
老人ホームへの入居には様々な理由があります。
その理由に対して入居相談員が相談を断ることはありません。
施設入居を検討されているというご相談に対して最善の施設をご提案すること、ご相談者さま、ご入居者さまが満足していただけるような仕事をすることだけを考えています。
息子さまが最後に言われた言葉があります。
息子さま「お金で解決したことに罪悪感はありません。お金を払って老人ホームにお願いするというのは自分たちの生活を守ることでもあるんですよ。これで良かったと思っています。老人ホームの存在ってそういう意味でもあるんですよね。」
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