※相談事例は全てご相談者さまの了承を得て記事化しております。
二世帯住宅か老人ホームか
たん吸引と認知症では面倒看れない
二世帯住宅の建築を機にご主人を老人ホームにお願いしようと思うがどうすればよいかわからないのでアドバイスがほしいというご相談をいただきました。
現在、ご相談をいただいた奥さまは和泉にお住まいで、息子夫婦もご自宅から車で20分程度のところに住んでおられます。
年齢も年齢だし実家を処分して一緒に住まないか、という息子夫婦からのご提案を受け入れようと思われていました。
ただ、息子さまから二世帯住宅の条件として旦那さまを老人ホームに入居させてほしいといわれ悩まれていました。
奥さまは現在、78歳で旦那さまの介護を行っていました。
旦那さまは81歳で認知症を発症しており、週に3日訪問介護サービスを利用しています。
また、週に2回の入浴サービスも利用しております。
さらに旦那さまは定期的にたん吸引をしなければならず奥さまが行っています。
できれば最期まで自分で面倒を看たいというのが奥さまの考えでした。
しかし息子さまはお母さまとは同居したいが、認知症と日に何度もたん吸引を行わなければならないお父さまの面倒を看るのは実質的に無理なので老人ホームに預けてほしいという考えです。
あと10年もすれば自身も介護が必要になるだろうし、そうなってしまったら老々介護も限界になるだろうと思っていた奥さまにとって二世帯住宅で息子夫婦と一緒に暮らすことはとてもうれしいことでもありました。
ただ長年苦労を共にしてきた旦那さまだけを老人ホームに入れることに抵抗感を持たれています。
実は二世帯住宅の話が出る前まで、奥さまはあと数年もしたら夫婦で同じ老人ホームに入居しようと考えていました。
ご実家を処分したお金と、これまでの蓄えを使えば二人で最期まで施設にいることができると試算していたのです。
訪問介護の介護士に相談をしたところ、当社の存在を教えてもらいご連絡いただけた経緯がありました。
老人ホームにするべきか否か
今回のご相談は入居先を探すことが第一ではありません。
まず、奥さまの気持ちがどちらにあるのかを確認しなければなりません。
長年付き添ってきた旦那さまを老人ホームに預けるのか、二世帯をあきらめるのかの選択に答えが出なければ先に進むことはできません。
このようなご相談はカウンセリングの要素を過分に含むため安易に施設に入るべきです、と提案するのは控えなければなりません。
奥さまは老人ホームについての知識がありません。
そこで、奥さまに老人ホームを利用されているご家族さまについてお話をしました。
同居がどうしても難しいご家族さまや、介護疲れによってこれ以上は介護する側がストレス過多になってしまうなど様々なケースについてお話をしました。
また、たん吸引が必須になると24時間ナースが常駐している老人ホームでなければリスクが伴うこともお話しました。
すぐに答えが出る問題ではありません。
1か月ほどの期間を想定して奥さまの疑問に丁寧に回答するプランを作成しました。
数回にわたるやり取りを経て、奥さまの気持ちがかまってきていることが分かりました。
そのころ合いで奥さまにどうしたいのかお伺いすると、
奥さま「私は残りの人生を息子と一緒に暮らしていきたい。主人は老人ホームにお願いしようと思います。」
という回答となりました。
この結論を得て老人ホーム探しのお手伝いが可能になりました。
たん吸引は医療行為
今回の老人ホーム探しでは、たん吸引の受け入れをしている施設をいくつ見つけることが出来るかがポイントとなります。
たん吸引は医療行為ですから介護士は基本ケアすることができません。
そのためナースが常駐している施設を探す必要があります。
※平成24年の社会福祉士及び介護福祉士法の一部改正により「喀痰吸引等研修」を修了すれば一定の条件のもと、介護士もたん吸引が出来るようになりましたが施設ごとにばらつきがあるのが実情です。詳しくは厚生労働省の「喀痰吸引等関係」を参照ください。
介護付き有料老人ホームか特養が選択肢となります。
また、ナースの常駐が24時間であるか日勤だけであるかについても確認する必要がありました。
奥さまはこれまでご自身で旦那さまのたん吸引を行ってきた経緯から、昼夜問わずたん吸引が出来る環境が良いという結論を出されました。
それを踏まえて施設探しにおける必須条件と充分条件を伺いました。
◆必須条件
・和泉のご自宅から車で1時間圏内
・24時間ナースが常駐している施設
・一時入居金:300万円以内
・月額利用費:25万円以内
・看取り
◆充分条件
・夫婦部屋があること
奥さまが二世帯住宅に移られてもご自身が認知症を発症したり、恒常的な身体介護が必要になってしまったら旦那さまと同じ老人ホームに入居するつもりであることがわかりました。
旦那さまが認知症でたん吸引が必須という状態であるがゆえに同居が難しいという息子さまの意思を考えれば、ご自身も認知症になったら家を出るつもりでいたのです。
幸いにも練馬区には老人ホームが数多くあり、ナースが昼夜常勤している施設も苦労せずに探すことができました。
数ある老人ホームの中から奥さまにとって最善である施設について社内で検討会議を行いました。
単にたくさんある資料をまとめて提案するのであれば入居相談員は必要ありません。
ご提案に足りるだけのリストがまとまったため、奥さまに改めてお時間をいただいて施設のご説明を行いました。
気になる施設が一社あるとして、奥さまから見学依頼をいただくことができましたので先方に見学依頼書を提出し日程を確定します。
見学の感想
当日は奥さまと息子さま夫婦が見学に来られました。
施設では居室以外にも食堂や浴室などを見ることができました。
見学が終了した後、息子夫婦と奥さまにお時間をいただき見学の感想をいただくことができました。
奥さま「老人ホームというのをはじめてみました。私よりも年配の方が多いような気がします。主人と同じような感じの方もいたように思えました。」
息子さま「もっと営業してくると思ってましたがそうでもないんですね。スタッフの方が忙しそうに歩き回っているのが印象的でした。白い服を着ているのが看護師さんですかね?これだけの利用者を数人のスタッフで対応するというのは大変な仕事ですね。」
初めて老人ホームの中を見ると多くの人はスタッフが忙しそうに動いていることに驚きます。
今回のご家族さまも同じような反応でした。
これが自然な反応です。そして些細なことでも感じたことはありませんか?と感想の深堀をします。
これが大切です。見学したときに感じた些細な事、とくに気になった悪い点は入居後にトラブルに発展する可能性があるからです。
奥さまと息子さまご夫婦からこんな意見が出ました。
奥さま「利用者さん同士で喧嘩とかないんでしょうか?あと、人の部屋からものを盗んだりする人とかはいますか?」
息子さま「よくテレビなどで介護士が利用者に暴力をふるう事件がありますがここは大丈夫ですか?」
奥さまの疑問である喧嘩ですが、集団生活である以上利用者さま同士、合う合わないは当然あります。
特に食堂で食事をする際などは喧嘩が起きやすいです。
ただ、老人ホームは仲の良い利用者さま、あまり仲が良くない利用者さまをしっかりと理解し食事の席(食席)などを工夫するのが普通です。
また、人の部屋から物を盗るようなことも日常的に発生する可能性があります。
施設では盗難について事故事案としてルールを設定しています。
人の部屋に勝手に入ることを「誤入室」と言いますが誤入室は見守りを強化することで防ぎます。
認知症の方で誤入室癖がある方は日中、共有部などでお過ごしいただき常時、スタッフが行動を見守ります。
息子さまのご質問に回答するのはとても難しいですが介護業界での一般的な見解を説明いたしました。
介護業界は人材不足でどこの施設もギリギリのスタッフで頑張っています。
しかし、明らかにオーバーワークになっている施設などではスタッフがストレス過多になり常軌を逸した行動を起こす可能性が高まります。
当社で老人ホームをご提案する際、過度な人材不足になっているような施設はご提案しません。
そのような施設は介護士が過剰ワークになっていたり、サービス残業が常態化しているため介護士が不満を抱えており提供しなければならないサービスの質が下がっていることが多いからです。
今回、ご提案した施設も他の施設同様、スタッフのローテーションには苦労をしていますが過剰労働にはなっておりません。
3勤1休を基本としたシフト構成を組んでいました。
当社のガイドラインで設定している過剰労働について
当社ではご提案する施設についてあらかじめ調べられることは調べ、当社ガイドラインに適合していない施設は提案リストに載せることはしません。
その一つが過剰労働です。当社独自の過剰労働定義を下記します。
・夜勤明け夜勤:長時間勤務である夜勤を行ったスタッフが当日の夜にまた夜勤に入る
・夜勤明け日勤:夜勤が終わった後にそのまま日勤業務にはいること。24時間以上の連続勤務
・サービス残業の常態化:30分以上出勤前、退勤前に準備をしなければシフトが回らないような作業工程を組んでいる
・2欠以上の欠けシフト:日勤スタッフが5人必要なのに常時3人しかいないような状態
一時的であれば要検討としますが、このような過剰労働が常態化している施設は提案を行いません。
これらはすべて介護士を疲弊させてしまいます。
私が介護士として現場で働いていた時に、リーダー介護士が人材不足により13連勤しているのを見たことがありますがこんなことは起きてはならないのです。
ただでさえキツイと言われる介護業務において13日間も休みなく働けば想定外の事故が起こってしまうことだってあるのです。
和泉の施設入居とその後
見学から1週間ほどして奥さまからお電話を頂き、見学に行った施設に旦那さまをお願いしたいとの回答をいただきました。
施設長に連絡をして契約の手続きを行い、ご家族さまのサポート業務を行いました。
入居日には私も施設までお伺いし挨拶を行いました。
当日は息子さまも来られていて、今回の件についてお礼の言葉を頂きました。
旦那さまが老人ホームにご入居されたのでこれから、二世帯住宅の建築に取り掛かります、ということでした。
ご入居後2週間ほどして一度、奥さまにご連絡をしました。
奥さまは週に1回の頻度で旦那さまに面会に行かれているそうです。
旦那さまは特に感情の起伏が激しくなることもなく穏やかな日常を送られているとのことでした。
また、この施設では他にもたん吸引が必要なご入居者さまがいるためたん吸引の上手なナースが常駐していることもわかりました。
以前に、たん吸引があまりにお粗末で転居になったケースを手掛けたことがあるためこのお話を伺い安心しました。
旦那さまが日々を楽しまれていることが分かりましたので今回のケースをクローズとしました。
医療行為が必要な高齢者の老人ホーム探しについて
たん吸引など医行為が必要な方に対する老人ホームご入居相談も行っております。
老人ホームの数が増えたとはいえ、医療行為が必要な高齢者さまの受入れをしている施設の数は絶対数が不足しています。
たん吸引に限らず、バルーン、ストーマなどを付けている方のご入居先探しは慎重に行わなければなりません。
医療行為のミスは命に直結するからです。
当社では医療行為が必要な高齢者さま向けにご入居相談を行っております。
ご相談は完全無料となり、いかなる場合においても費用が発生することはございません。
ADLの悪化により医療行為が必須となってしまったご家族さまについて老人ホームをご検討されている方は以下よりお問合せいただければ幸いです。
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