※相談事例は全てご相談者さまの了承を得て記事化しております。
老人ホームの転居
今回は実例に入る前に老人ホームの転居について少しだけお話させていただきます。
「老人ホームは終の住処」そう願っている方は年々増えてきていると感じます。
同じく、老人ホームに入居したらその施設が終の住処になるというイメージを抱いている方も多いのではないでしょうか?
しかしながら実際に無料相談を行っていると決して、期待通りにならないケースが多いことがわかります。
残念ながら法人ホーム選びを失敗してしまったと感じるご家族さまの方が多いのかもしれません。
老人ホームにもよりますが、入居を検討されているご家族さまがご見学をする際、ホーム長は、
ホーム長「どんな状態でも最後まで面倒を見ます。」
と言います。
在宅生活で問題を抱える家族にとっては、入居するご本人さまがご自宅に戻ってこられては困るというのが正直な気持ちでしょう。
在宅介護に問題がなければ、老人ホームに入居する必要はありません。
従いまして「どんな状態になっても、最後まで面倒を見ます。」と言う言葉にご家族さまは安堵を覚えます。
「途中で家に戻ることなく、老人ホームで最後を迎えてくれる。」
当社が無料相談を始めたころはこのような営業を行う施設が多かったことは事実です。
そして、現在においても、このフレーズで家族の背中を押す老人ホームは多いです。
少し荒っぽく書けるのであれば、せっかく来た入居希望者をそう簡単に手放したく無い施設側と、自分達の生活リズムが崩れてしまうことを懸念されたご家族さまの「介護状態の親を亡くなるまで預かってもらいたい」気持ちがマッチしているのです。
最後まで選択された老人ホームで何事もなく過ごすことが出来る入居者さまもたくさんいらっしゃいます。
しかしながら、「事情」が変わってしまい「転ホーム」することになる入居者さまが一定数いることもまた事実です。
「転ホーム」を勧める老人ホームが実は「優良」老人ホーム
老人ホームを転居すると書くとネガティブに聞こえますが、実はそうとも限りません。
むしろ相談者としては、老人ホームを終の住処とは考えないほうが良いと思っています。
介護は、仕事として対価をもらう人がサービスを購入した人にサービスを提供するサービス業です。
誰が面倒を看てくれるかということも重要ですし、老人ホームの種類によって得意分野も違います。
※老人ホームの種類については「施設の種類」をご参照ください。
認知症の方への介護を得意とするホーム、リハビリを得意とするホーム、自立した高齢者への見守りと自立支援を得意とするホーム、難病などの特定疾患を得意とするホームや医療的ケアが必要な人を得意とするホームなど多様化しています。
日々進化する介護理論を学び反映することで独自性を生み出している現在の介護施設では高齢者をひとくくりに「老人」として介護サービスを提供することはできないのです。
従って、
「なんでもやります!どんな高齢者さまでも受け入れます!」
というホームほど怪しいところはないと思っています。
老人ホーム選びでは、入居者さまご自身のやりたいことや維持したい生活スタイル、身体状況などを勘案して、その時の状況に合った施設を選ぶことが大切です。
穏やかに他の入居者さまやスタッフの方達と関わりながら自分の生活スタイルを守りたいと思っている高齢者さまが、認知症を得意とする高齢者施設に行っても、リハビリをガンガンやっているところに行ってもミスマッチになってしまいます。
介護は医療と違い、生活を支えるための技術や知識を得るため、資格以上に自己研鑽に委ねられる部分が多いためスタッフ間の介護士レベルの差は大きいことは介護業界に携わる者であれば誰しもが知っています。
また介護士自身が得意とするケアの内容も違います。
そのため、老人ホーム側が「売り」にしている部分が実は「売れない物」になっていることもあります。
そこで働く「人」をしっかりと見ることが大切です。
介護は、
「誰が面倒をみてくれるか」
が一番重要だと私は考えています。
老人ホーム側が入居者さまご本人の思いや身体状況をしっかりと把握し、
ホーム長「現状ではうちのホームよりも別の老人ホームの方がご本人さまらしく暮らせると思います。」
ホーム長「認知症が進んでしまい、お身体の状況が悪化したことにより、当施設ではこれ以上、ご入居さまの面倒を見続けることは難しいです。」
など、施設が提供できるサービスをしっかりと理解し、状況の変化を正直に説明した上で転居を勧める老人ホームが信用される時代になってきています。
こうした状況の変化による「転ホーム」はポジティブと言えるでしょう。
思ったより長生きしてくれた・・・
老人ホームにご入居したことによって、元気になる人、長生きする人も多くいらっしゃいます。
入居している他者との関わりや、共同生活による刺激から、もっと頑張ろうという気持ちになるのかもしれません。
老人ホームで三食(朝・昼・晩)栄養管理された食事を摂り、規則正しい生活を送り、往診等を使いこまめに診療してもらうことも大きな要因です。
元気に長生きしてくれることは家族にとっても嬉しいことだと思います。しかし、それが思わぬ誤算を招くこともあります。
世田谷区松原にお住いのA様のケース
分離型の2世帯住宅の1階にお父様、2階に娘さんご家族が住まれていました。
同居前はご近所で別居をしていましたが、お母さまの他界でお父さまお独りでは心配ということで松原の実家を建て替えて暮らしていました。
72歳の時に脳梗塞を起こし、多少の麻痺は残ったものの娘さんの手は殆ど借りずに生活していましたが、75歳の時に誤嚥性肺炎を起こしてしまいました。
そこから一気に体力も落ち、ADLも落ちてしまいました。
娘さんご夫婦は共働きでたまの出張などで家を空ける時もあり、在宅介護において心配されていました。
お父さまは訪問介護やデイサービスを利用していましたが、ショートステイは拒否されていました。
ショートステイは様々な高齢者さまが利用しますが、認知症が進行した高齢者さまも多く利用されます。
以前、お試しでショートステイをご利用されたときの印象が良くなかった為に、ショートステイを使うくらいなら老人ホームに行くとの考えをもたれていました。
そこでご本人さまの意志で老人ホーム探しが始まりました。
お父さまは、この年で老人ホームに入居するならば「終の棲家」にしたい、というお気持ちがあったそうです。
誤嚥性肺炎もあり、将来的には痰吸引が必要になるであろうことから24時間看護師常駐の介護付き有料老人ホームへのご入居を決めました。
その施設はリハビリや機能訓練も積極的に行なっており、お父さまも気に入られた上でのご入居となり、施設生活は何の問題もなく安定した日々を過ごされていました。
世田谷区内の24時間看護師常駐の介護付き有料老人ホームの費用はかなり高額です。
入居時に必要な一時金は娘さん夫婦からも少し援助しましたが、毎月の利用料はお父さまの資産からのお支払いとなりました。
76歳・要介護3で入居したお父さまでしたが施設内では、誤嚥性肺炎を起こすこともなく元気にすごされ、83歳で要介護1になっていました。
ところが入居から7年、お父さまの資産がショートしてしまいました。
金銭管理はご本人さまが行なっていたため、娘さんはそのことを把握していませんでした。
いきなり訪れた資金ショート
娘さん夫婦が負担したとしても、あと何年も住み続けることはできません。
やむなく施設を退去することになりました。
一時的に自宅に戻りましたが、自宅に戻ってからは元気がなくなり、すっかり老けこんでしまいました。
私に相談が来たのがこの時期でした。
娘さん「こんなに元気になって長生きするなんて入居する時には思ってもいなかった」
と娘さんは複雑な表情でおっしゃっていました。
相談員として娘さんの心情は、
(ここまで来たら在宅介護は考えたくない)
というのが正直な気持ちであることはすぐに理解できました。
しかし、再度老人ホームに入居するにしても資金の問題があります。
実は、A様のように途中で施設利用料が払えなくなってしまう方も少なくありません。
施設のご紹介においてご家族さまのお話を伺っていると皆さま異口同音で、
「○年分の資金は大丈夫です。あと○年も生きないでしょう」
とおっしゃります。
しかし、資金ショートの問題はそのような計画を持たれているご家族さまに多いように感じます。
何年続くのかわからないのが介護です。
介護に伴う資金はとても重要なファクターです。
資金ショートによる転居ほどネガティブな「転ホーム」はありません。
その時その時の状況に合わせて、ベストなところに住み替えるのは悪いことではありません。
引っ越しに関わるご負担も確かにあるかもしれませんが、それは一時的なものです。
介護や環境により高齢者の状況は大きく変化します。
その変化に柔軟に対応できるよう、柔軟にプランを組み立てなおすことは老人ホームを利用する上でとても大切な考え方です。
良い意味での「住み替え」をお勧めします。
そのために分からないことなどがありましたらお気軽に無料相談までご連絡ください。
相談員はこれまでに多くの紹介事例を扱ってきました。
たくさんのノウハウから、ポジティブな転ホームに関するアドバイスを行っております。
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