※相談事例は全てご相談者さまの了承を得て記事化しております。
サ高住にご入居しているパーキンソン病のお母さま
LINE相談に転居先の選定についてのご相談が入りました。
神奈川県は中原区、武蔵小杉にお住いのご家族さまからでした。
転居を希望されているのは現在、サ高住にご入居中のお母さまです。
当時、お母さまは武蔵小杉のご自宅で独居生活を楽しまれていましたが、ご家族さまがご様子伺いに行くたびに転倒と思われるアザが増えていることに気づかれました。
かかりつけ医に相談をすると、パーキンソン病が進行してきており独居はリスクがあるので何らかの対策を講じるほうが良いと診断されました。
当時のケアマネジャーに相談したところ同居が難しいのであれば老人ホームにお願いしてはどうか、というアドバイスを受け現在のサ高住を見つけ契約をされた過去があります。
※サ高住については施設の種類にてご確認いただけます。
サ高住ではしっかりとした見守りを行っており看取り対応もしていることからそこで最期を迎えてほしいという想いがありました。
お母さまはサ高住でのんびりとした日々を送っていました。
ところが、長いこと勤めていた介助を担当していたヘルパーの介護職員が退職し、新しく来たヘルパーとなってから少し状況が変わったそうです。
介助担当のヘルパーの接遇に疑問を抱く
それまでずっと担当してくれていた担当ヘルパーの介護職員から担当が外れる旨の連絡を頂き、新し担当から改めてご連絡をもらえると思っていたご家族さまですが一向に連絡がきません。
忙しいので仕方がないと思いながらも転倒リスクが大きいお母さまを預かっていただけるありがたさが強かったそうです。
そんなある時、ご家族さまが面会に行かれたそうです。
そこで、施設長から新しい担当ヘルパーについてアナウンスがありました。
ご家族さまは、新しい担当者に挨拶をされたそうです。
すると、担当ヘルパーからも丁寧なあいさつをもらえ安心されました。
変なところはなく真面目そうな印象だったそうです。
その時は何も問題はありませんでした。
お母さまは施設でも転倒を繰り返しており転倒の度に施設からご家族さまに状況説明のお電話がかかっていました。
ご家族さまは転倒を繰り返すことは仕方がないので重症にさえならなければ良いという想いだったそうです。
お母さまを引き取って同居することも難しく、施設にお願いするしかない以上、施設に対しては感謝の気持ちしかなかったそうです。
ところがある時、担当ヘルパーからご家族さまに電話がかかりました。
転倒が発生したことを伝える電話でしたが、担当者が明らかに不機嫌な声で状況を説明していることに不安を覚えたそうです。
お母さまは月に数回転倒しており多い月には8回以上の転倒もあったそうです。
新しい担当ヘルパーは相当にストレスをためていたのかと思われます。
しかしどのような理由があるにせよ、保証人さまやご家族さまに罪はありません。
担当ヘルパーの態度は人間を相手にするサービス業として容認することはできません。
【ちなみに】
介護現場で働いていた経験からするとお母さまの転倒回数としては多いと思いました。
このような場合、施設側では転倒リスクを下げるためにいろいろな対策を取るのですが対策がうまく機能していないことが分かります。
ちなみにパーキンソン病の進行度を評価するための指標があります。
ホーン・ヤールの重症度分類がそれにあたります。
お話を伺う限りお母さまはホーン・ヤールの重症分類ではⅢ度だと思われます。
生活機能障害度は2度と言えます。
Ⅲ度とは手すりや杖を使うことでご自身で移動することはできますが、方向転換時に転倒しやすくなります。
目的物があるとそこに向かって突進する傾向があり結果的に転倒することもあります。
また、歩行が不安定で歩いていると突然小刻みに歩くようになったり、足が前に出なくなる等の症状が見られます。
2度とは日常生活に部分的介助を要する状態です。
この状態では一般的に、ご本人さまが自由に動き回り転倒リスクが上がってしまうため施設では、見守り必須となっていることが多いです。
転倒リスクを回避するため日中、見守りが可能な共有部でお過ごしいただいたり、介護スタッフが手薄になる時間だけ居室で臥床していただくなどの対策を取ることで転倒リスクを回避することもあります。
ホーン・ヤールの重症度分類について書いておきます。
◆重症分類
【0度】 パーキンソニズムなし
【I度 】 一側性パーキンソニズム
【II度】 両側性パーキンソニズム
【III度】軽~中等度パーキンソニズム。姿勢反射障害あり日常生活に介助不要
【IV度】高度障害を示すが歩行は介助なしにどうにか可能
【V度】 介助なしにはベッド又は車椅子生活
◆生活機能障害度
【0度】 日常生活、通院にほとんど介助を要しない
【1度】 日常生活、通院に部分的介助を要する
【2度】 日常生活に全面的介助を要し、独立では歩行起立不能
ここにいてはダメだ!一刻も早く退居しなければ
担当ヘルパーの態度に疑問を持っていたご家族さまですがついに疑問が確信に変わる出来事が重なり転居を決意されたそうです。
ある日、面会に行かれたご家族さまがお母さんとの面会を終え、居室から出てくるとスタッフの話し声が聞こえてきたそうです。
その際、スタッフはご入居者さまのことを全て呼び捨てで呼んでいたそうなのです。
その内容も耳を疑うようなことばかりだったそうです。
例えば、
介護職員「〇〇はADL下がっててもうトイレ介助無理だからとっととオムツにすればいいんですよ。それなら一日中臥床させれられるんで楽ですよね」
介護職員「◆◆は今度、薬投入だって。ホント助かるよね。これで動かなくなるんで転倒しなくなるでしょ。もっと早くそうすればよかったんですよ」
これは現在の介護では完全な虐待に該当します。あり得ないことです。
この職員はご家族さまが共有部にいることを知らずに話していたようなのですが、ご家族さまに気づくと手を前で組んで挨拶をしたそうです。
その時に気まずそうな顔などは一切なかったそうです。
施設についての不信感が大きくなった時にあることが起こります。
お母さまが夜、居室で転倒されたことが報告されました。
その際、施設長の説明でこの施設にはいられないと確信されたと仰いました。
その内容ですが以下となります。
・居室転倒は施設の責任ではないが報告はする
・転倒が多いので薬による対策を検討している
・転倒が多いのでオムツに切り替えて日中は部屋で寝てもらう
面会の時に介護職員が話をしていた薬投入というがお母さまの事だと確信されたそうです。
ご家族さまは、このままではお母さまがとんでもないことになってしまう、と恐怖を感じたそうです。
そして一刻も早くこの施設からでなければいけないと強く確信されました。
入居相談員としてこのお話を聞いて悲しくなりました。
施設の都合も痛いほど理解できます。
しかし今の介護理論ではそれらはすべて「やってはいけないケア」なのです。
身体的虐待の疑いと転居先のリスト作成
施設長がご家族さまに伝えた内容の真意について介護的な見地や元介護士の経験から仮説をご説明します。
・居室転倒は施設の責任ではないが報告はする
居室転倒は施設の責任ではない、という施設長の発言ですがこれには理由があります。
老人ホームの契約は「建物賃貸借契約」となります。つまり、お部屋の賃貸契約になるわけです。
私たちがアパートを借りる時の契約と同じなのです。
介護型のサ高住の場合は同時に「利用権契約」も結びます。
これは、簡単に説明すると介護サービスを受けるための契約となります。
介護型のサ高住ではこの2つの契約を結ぶことでケアを受けながら生活をすることが出来るわけです。
つまり、施設長としてはお部屋の中の出来事は大家の管轄ではない、ということを言いたかったわけです。
それにしても転倒の言い訳として使うことはあまりありません。
・転倒が多いので薬による対策を検討している
睡眠薬や向精神薬を投与することにより行動制限をする行為は身体的拘束の虐待に該当する場合があります。
ベンゾジアゼピン系薬剤が追加されている場合は注意が必要です。
これは睡眠薬や向精神薬で使われる薬剤です。
例えば、夜眠ることが出来ないので処方される場合は問題ありません。
また、強すぎる帰宅願望により暴言、暴力が看過できない場合にも処方されることがあります。
しかし行動制限を目的としている場合はご本人の動きたいという思いを制限するものですから虐待に該当します。
もしお母さまに投与される事態になれば転倒は防げますがお母さまは終日、ウトウトしたような状態になってしまいます。
なぜそのような薬を処方するのかを説明します。
転倒して骨折すると責任問題に発展しかねません。
見守りができる人員配置にもかかわらず転倒骨折になると施設側に責任が及ぶ可能性があるためリスク回避の措置であると言えます。
もし裁判になると施設側が敗訴する可能性があるため施設としてはリスクを取りたくないというのが本音です。
・転倒が多いのでオムツに切り替えて日中は部屋で寝てもらう
お母さまはリハビリパンツ+パッドで生活をしており、ご自身で歩くこともできます。
歩くということはお母さまが何かしらの目的を持っていることの表れです。
人材不足により現場の介護職員の負荷が多くなることは理解できますが、負担軽減のためにいわゆる「寝かせきり」とするのは身体的虐待に該当する場合があります。
前述と同様、リスク回避の措置であると言えます。
施設長の説明には上記のような意図、さらにはお母さまの生活に支障がでる可能性があることを説明しました。
ご家族さまもやはり同じような印象を持たれていました。
ヒアリングが完了すると正式に、転居先の施設探しのご依頼を頂きました。
施設を探すにあたり必須条件と充分条件を頂きました。
◆必須条件
・一時入居金:300万円以下
・月額利用料:25万円まで
・即入居
・川崎、都内近郊
◆充分条件
・車で1時間圏内
・サ高住以外
川崎にはたくさんの施設がありますし武蔵小杉であれば二子玉川あたりまで対象となりますので都内施設も検討対象となります。
充分条件にサ高住以外とありますが、入居している施設に対する不安が大きく同じ施設形態は避けたいというご家族さまの強い想いが理解できました。
サ高住が全てこのような施設とは言いませんが、ご家族さまの条件は満たさなければなりません。
住宅型有料老人ホームか介護付き有料老人ホームが適切であると判断しました。
施設探しをするといくつか条件に合う施設が出てきました。
ここから施設の評判などをわかる範囲で調べていきます。
口コミなどでは分からない点などもネットワークを使って調べることが出来るのが当社の強みです。
最終的に2つの施設について見学依頼を頂くことが出来ました。
どちらも介護付き有料老人ホームとなりました。
見学に関しての感想については記事にしないでほしいというご家族さまからの希望がございましたので見学内容については伏せさせていただきます。
結果としてご紹介した施設の1つに転居が決まりました。
武蔵小杉から60分圏内の施設に転居
転居が決まった施設は武蔵小杉のご自宅から車で1時間圏内という充分条件を満たしています。
入居が決まりましたので転居に関して契約などのサポートを行います。
転居先の老人ホームについては全く問題ありませんでした。
施設長も若くして仕事ができると思えるような方であり、働いている介護士も接遇がしっかりしていました。
退居する側の施設にも連絡をする必要がありましたので施設長に連絡をすると退居理由や当社の位置づけなど根ほり葉ほり質問をしてきました。
明らかに不満な様子であることが分かりました。
非常に残念ですが、このような昭和の介護そのままに運営しているような施設がまだあることに驚きを隠せないのと同時に老人ホーム選びの難しさについて考えさせられました。
このような対応をしている施設は評判が口コミなどにも表れやすくなります。
そうなると入居率が下がるだけではなく施設長が更迭される事態になります。
少なくとも現時点においては当社でこの施設を紹介することはできません。
さて、そんなこともありましたが無事にすべてのサポートが終了しました。
転居日には入居相談員として私も施設前まで伺いしました。
ご家族さまとお母さまが車から降りられてきましたのでご挨拶をいたしました。
お母さまは杖歩行でご家族さまに支えられながら歩かれていましたが私を見ると立ち止まり、
お母さま「こんにちは、いい天気ですね。」
とにこやかに話しかけてくれました。
転居後、1か月ほどしてご家族さまからLINEを頂きました。
お母さまは仲良くなったご入居者さまとババ抜きをすることを楽しんでいるということでした。
また、施設から塗り絵をされていると立ち上がりが抑えられるということで定期的に塗り絵を持って面会に行かれるそうです。
はがき型の塗り絵を渡すと定期的にお母さまが塗られた塗り絵がご自宅まで届くので楽しみにしていると書かれてありました。
入居後、転倒連絡があったそうですが以前の施設ほど転倒連絡はなく、施設選びが適切だったと書かれており一安心しました。
そのLINEメッセージを確認して今回のケースをクローズといたしました。
入居中の施設の対策に疑問を持たれているご家族さまへ
今回の件は老人ホームの見えざる部分、施設都合が強すぎるがゆえに転居となってしまったケースとなります。
残念ながらこのような施設があることは事実です。
介護技術と介護理論は日々更新されており、古い介護方法を実践している施設は今の理論からすると「虐待」になることがあります。
具体的に何が虐待なのか分からなくても、施設の対応に疑問を感じる感覚を大事にしてください。
その疑問はたいていの場合において今の介護業界ではNGとされているからです。
当社では入居中の老人ホームの対応に疑問を持たれたご家族さまからのご相談が増えております。
今回ご相談を頂いたご家族さまもきっかけは、以下のLINE相談からでした。
当社ではご入居に関する無料相談窓口を設置しております。
ご相談はいかなる場合においても費用が発生することはございません。
お気軽にご相談いただければ幸いです。
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