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【九品仏】母娘で父の在宅介護を頑張るも排泄や体力的な問題から施設入居を検討

更新日:4月22日



母娘で父の在宅介護を頑張るも排泄や体力的な問題から施設入居を検討

身体的な問題から在宅介護が難しくなることがあります。在宅介護のある意味での限界と言えるのかもしれません。

今回はそのような事例についてご説明いたします。

骨折による生活環境の変化


80歳を超えても意識ははっきりしており、ご自身の主張もしっかりしているお父さまは元気そのものでお母さまも娘さんも介護は必要ないと考えておられました。


ある日、お父さまがトイレに行く途中で転倒し右大腿骨頚部骨折により入院となってしまいました。


退院後は老人健康保険施設でリハビリを行いケガの経過も良くなり、在宅復帰されたことでご家族は一安心されたそうです。

しかし、ご自宅に戻ってきたお父さまは以前のお父さまではなくなっていました。


それまで外出して近所の知り合いと碁を指したり、歌声喫茶で唄うことをなによりの楽しみにしていたお父さまが外出をしなくなってしまったのです。


一日中、テレビを見ていることが多くなりました。

また、愚痴が多くなり理由もわからず激高するようになってしまったそうです。


老人健康保険施設(老健)とは、リハビリ目的の中期入所施設です。 高齢者が病気やケガで入院したのち、医療ケアやリハビリテーションを行いますが自宅療養が難しい場合、一時的に入居して在宅復帰までの回復を行うことが出来る施設です。 医師が1名以上常駐し理学療法士や作業療法士など資格保持者が専門的な指導を行っています。 介護保険を利用できるため費用を抑えることが出来ますが、入所期間は3か月で長期入所はできません。

要介護1と判定



異変に気付いたのはお母さまだったそうです。


お父さまが家の中で転倒することが多くなったことに気づいたお母さまは認知症を疑いました。


しかし発言ははっきりしておりおかしなところはありません。

思い過ごしかと思っていたのですが2か月ほどしてから、お父さまが認知症だけではなく何かしらの異変が起きていることを実感しました。


家の廊下に水分が滴っていることが多くなったのです。

お父さまは排泄調整がうまく出来なくなっていました。


半年ほど経過すると尿だけではなくなってきていたそうです。

娘さんはこの時期にお父さまが排泄の失敗があることに気づいたそうです。


テレビを見ている部屋からトイレまでの間に排泄の失敗により糞尿が落ちることが多くなりました。


気付かずにいるとニオイが充満してしまうため、できるだけ迅速にふき取ることがご家族さまの課題になっていたそうです。


消臭マットや尿を吸い取るパットなどを購入しトイレに置くなどの対策を行いましたが一度ついてしまったニオイはなかなか取れないため、お父さまに紙パンツの着用をお願いしました。


ところが、お父さまは紙パンツに対して感情をむき出しにしていやがったそうです。


仕方なく出来ることとしてお父さまと定期的に話し、排泄の失敗をいち早く察知し、処理することになりました。


すっかり外出をしなくなっていたお父さまは排泄の失敗だけではなく筋力も低下したため、以前にも増して家の中でも頻繁に転ぶようになっていました。


また、定期的な運動を行わなくなってはいましたが食欲だけは旺盛でしたので体重がかなり増えてしまっていたことも転倒の原因になっていました。


お母さまはお父さまの現状から在宅介護について包括支援センターに相談に行かれたそうです。


そこで介護認定を受けると要介護1と判定されたそうです。


身体が大きすぎて家族で対処できない



要介護1の判定を受けたとはいえ、お父さまは施設に入ることを頑なに拒否していました。


そんな折、お父さまがトイレで転倒して立てなくなってしまったのです。


お母さまと娘さんでなんとかトイレから運びだそうとしたのですがお父さまの体重は75キロを超えていました。


この時は二人でなんとか寝室まで運ぶことはできたそうです。


しかし、筋力の低下による弊害はこれだけではなかったのです。



お父さまはご自身ではまだ若いと思われていたのですが実際には体力的な老化が進んでおり、立てなくなるなどの症状が多くなっていました。


お父さまが転倒によりケガをすることが多くなってきたこともありお母さまは再度、地域包括支援センターにご相談されたそうです。


そこでセンターの相談員さんから老人ホームへの入居検討のお話をされました。


地域包括支援センターの相談員さん経由でお母さまからご連絡をいただいたのはちょうど、この頃でした。


ご家族はすでに介護限界になっていた



お母さまと娘さんからお話を伺いこれまでの経緯を理解しました。


ご自宅でお父さまともお話をさせていただく機会がございましたので心情をお伺いしたところ、突然、二人にしてほしい、と言われ私とお父さまだけでお話をすることになりました。


そこでお父さまのお気持ちを知ることが出来ました。


お父さまは自身の排せつの処理がうまく出来ないことに相当なショックを持たれており、紙パンツの提案をされた時、必要性を感じてはいながらもご自身が老人になってしまったショックを受け入れることが出来ず怒ってしまったことを冷静にお話されました。


さらに骨折してから外出が怖くなってしまったこともお話していただけました。


老人ホームへの入居に関しては、自分は積極的に話しかけるタイプではないので、新しい環境でうまくやっていけるか不安であることもお話されました。


私は相談員としてお父さまが抱えてらっしゃる不安は、高齢者であれば誰しもが持つ感情ですから決してご自身を卑下なさらないで下さい、とお伝えしました。


30分ほどお話していたかと思います。


しばし黙っていたお父さまですが何かを決断されたのか、顔を上げられた後、娘さんとお母さまを呼ばれゆっくりした口調で話はじめました。


「これまでオレの面倒を看てくれてありがとう。老人ホームに入ろうと思う。」


娘さんとお母さまは突然のお父さまの発言に少しためらいの表情をされていましたがすぐに理解されたようでした。


ご家族の皆さまの気持ちが一致したこともあり、相談員として老人ホームの選定にあたり、諸条件をお伺いしました。


・ご自宅から1時間県内であること

・ご予算が23万円以内であること

・男性職員が多いこと


3つが最終的な条件となりました。3つ目の男性職員が多いこと、についてはお父さまの体重が平均よりも重たいことから挙げられた条件でした。


娘さんとお母さまで在宅介護をするにあたり、お父さまを抱え上げることが難しかった経験からきているものでした。


これまでも何度か転倒してしまいお父さまを抱え上げてきたお二人でしたがご自身も高齢になってきていることから、いつまで対応できるか不安だったのです。


条件をいただき施設の選定に入るといくつか候補となる施設が出てきました。


ただ、男性職員がご家族さまが期待すような人数を満たしている施設はありませんでした。


そこで常勤として男性スタッフさんが必ず1人以上いる施設として選定を行いました。


候補として3施設ご提案したところ、実際に目でみてからでないと判断できないとの結論となり、3施設に見学依頼を出しました。


施設見学にはご家族全員と私が同行しました。


3施設ともそれぞれ特徴がありましたが、その中でお父さまが気にいった施設があったため入居希望を出しました。


施設側もご入居に対して積極的であること、すぐに入居できることから、早々にご入居手続きを行いました。


ご入居から1か月ほどしてお母さまからご連絡をいただきました。

その際、お母さまと娘さんが在宅介護に限界を感じていたことをお話いただきました。


排泄の処理は本当に辛くなぜ、このようなことになってしまったのか毎日のように悩まれていたそうです。


そして、体力的にどうにもならないことの悔しさがあったこともお話していただきました。


今回の件ではご家族の皆さまが在宅介護の限界を同時期に感じていたのです。


在宅介護の考え方



在宅介護はご家族が中心となって行う介護です。もちろん訪問介護などを利用することもできますが基本的にはご家族の力が無ければ介護を続けることはできません。


これまでにも多くのご相談から在宅介護には物理的な限界があることは承知していました。


今回のケースでいえばお父さまの体重です。


体重が重ければ介護する側も体力が無ければ対処できません。有事の際であっても体力不足により対処できなければ在宅介護に関して不安が付きまとってしまうのです。


幸いなことに今回は、娘さんとお母さま二人体制で対応できたためなんとかやりくりが出来ていました。


娘さんとお父さまの二人家庭などはもう少し深刻になります。


また、排泄の問題についても在宅介護の限界に至る要因として大きくのしかかってきます。


排泄の失敗は介護する側の負担も大きいですが、介護される方の尊厳も大きくむしり取っていきます。


認知症を発症していない場合は特に深刻となり得ます。


尊厳に関する問題はご家族さまのコミュニケーションでも表面化しづらい問題です。


実は、お母さまはお父さまの排泄の失敗についてかなり早い段階から気づかれていました。

しかし、娘さんにそのことを伝えられず、娘さんが知らないうちに排泄物の処理をしていたのです。


親子の間柄であっても排泄問題は表面化しづらいのです。


在宅介護において気を付けるべき点は介護する側は決して介護される側の尊厳を損なうような発言や態度を取ってはいけないことです。


介護される側はご自身の失敗や老化について理解されています。そして、そのことを恥じていることも多いのです。


それはご自身が悪いのではありません。


老化に伴う自然現象なのです。


介護とは身体的なサポートをすることだけではありません。介護される側が自立するために最低限のサポートをすることが本質です。


それは心のケアも含んでいるのです。


病人扱いするのではなく、老人だからといった先入観をもって接することでもありません。


何ができて、何ができないのか、何をどうすればよいのか、を考え、これまで通りに接するために必要な最低限のサポートとはどのようなものか、を洗い出し実行することが介護を上手に行うポイントであるといえます。



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