
[東京都世田谷区梅丘在住85歳男性のケース]
いろんな苦労を乗り越えてようやく入居した老人ホーム。
実は入居してから想定外の事がよく起こるものです。
そしてしっかりと施設の特性や料金設定を理解していなかったがため、
「こんなはずじゃなかった」
といったこともよく耳にします。
老人ホームへの入居は、下調べ、見学、申し込み、健康診断、入居審査が終わってようやく入居手続きとなり、引っ越しとなります。
かなりの労力と体力、事前に費用がかかることもあります。
骨折り損のくたびれもうけにならないよう注意したいところです。
こんなはずじゃなかった、全然安くないじゃない!
こう話すのは、東京都世田谷区は梅丘にお住まいのAさんご夫妻。
旦那さま(85歳)の脳梗塞をきっかけに奥さま(82歳)の在宅介護は始まりました。
それまでは自宅マンションで夫婦二人の年金生活でしたが、足腰も丈夫で不自由はあまり感じる事なく生活していました。
しかし、脳梗塞による半身麻痺の後遺症で車椅子の生活となってしまいました。
奥さま一人では介助が難しいため、訪問ヘルパーやデイサービスを使いながら生活を続けていましたが、奥さまの介護疲れも溜まってきていました。
ご自分の身体の限界を感じてきていた折、自宅の近所に有料老人ホームが建ちました。
すぐにお二人で見学にいき、「利用料」も年金で払える範囲で、立地も気に入りご入居を決めました。
自宅マンションはひとまずそのままにし、後々どうするかを考えることにしました。
これが結果的に二人を救うことになります。
新たな生活を楽しみに有料老人ホームにご入居しましたが、2ヶ月ほどで退去し、自宅マンションへ戻ることとなってしまいました。
なぜこんな事になってしまったのでしょうか?そこには2つの想定外因子が存在していました。
一つ目は、夫婦の年金の範囲内でのやりくりにするため、夫婦部屋にしたこと。
夫婦部屋とはいえ、約10畳一間の空間に四六時中二人でいることで、息が詰まってしまい喧嘩する事が増えてしまいました。
他の入居者に気を遣ったりと精神的な負担が大きくなってしまったのです。
二つ目は、「利用料」にありました。
施設に対する「月額利用料」と介護サービスの「利用料」が別だったのです。
施設利用料のみであれば年金で賄えましたが、介護サービス利用料の負担を別にすると数万円の別途料金が発生してしまったのです。
このご夫婦が入居したのは「住宅型有料老人ホーム」であったため、施設の月額利用料と介護サービス利用料が別々だったのです。
介護サービス利用料を想定していなかったので、自宅マンションで暮らすよりもリーズナブルで、夫の介護からも解放されてのんびりと生活できると思っていたのに、月に支払う総額は前の生活費よりも高額になってしまいました。
この2つの理由で退去となってしまったのです。
有料老人ホームには、
①介護付き有料老人ホーム(特定施設入居者生活介護の指定を受けいている)
②住宅型有料老人ホーム(特定施設入居者生活介護の指定を受けていない)
の2つに分かれます。
より自立した人の生活を支える住居という事でサービス付き高齢者向け住宅などもあります。
介護付き有料老人ホームは、都道府県や市区町村の「指定」を受けた特定施設なので、介護保険サービスを直接行い、包括報酬で支払いが行われます。
それに対し、都道府県への「届出」で営業する住宅型有料老人ホームは、入居者が介護保険サービスを利用する際は、介護サービス事業者と別途契約し、介護サービス利用料を支払わなければなりません。
※特定施設:厚生労働省が定めた介護保険法の基準(人員基準・設備基準・運営基準)を満たしたもので都道府県や市区町村へ届け出て、事業指定を受けた介護施設のこと
このため、住宅型有料老人ホームの方がリーズナブルな料金設定をしているところが多いのです。
また、月額利用料の内訳にも気をつけてチェックする必要があります。
月額利用料の中に水道光熱費が含まれている施設もあれば、別途請求の施設もあります。
どのタイプの老人ホームに入居するにしても、何にどれくらいのお金が必要なのか細かく確認する必要があります。
サービス内容にも大きな差がありますので、入居者は施設に対して何を求めるのかをはっきりさせ、その施設で要望が満たされるのかを見極める必要があります。
安さの裏側には必ずカラクリがあるのです。
高級な介護付き有料老人ホームに入居したのに・・・
介護付き有料老人ホームも料金設定はピンキリです。
殆どの施設で入居一時金が設定されています。 入居一時金0円というところもありますが、一般的ではありません。
入居一時金とは、施設に対し入居時に支払うもので、その施設を終身利用する「利用権」を取得することを目的としたものです。
家賃の前払いという位置付けになっており、5年の償却を想定している施設が多いです。
5年以上生活するときは、月額利用料がそれ以降も変わらないのでお得になりますし、5年以内の退去時は、初期償却分を引いた残金が日割計算で返金されます。
①高い入居一時金を払えば、月額利用料が抑えられる。
②入居一時金の支払いを抑えて、月額利用料が高くなる。
このルールは変わりませんが、施設によって色々なプランが用意されています。
一般的な家賃が高いような所に立地する施設は利用料も高くなりますし、高級な有料老人ホームは、食事にこだわっていたり、高級ホテル並みの設備が揃っていたりさまざまな差別化を図りホームの特異性を打ち出しています。
また、24時間看護師が常駐していたり、医療連携を強化し手厚い医療体制を作っている施設もあります。
もちろん介護スタッフの人員配置の手厚さにも違いがでます。
介護保険法では、介護付き有料老人ホームの場合、入居者3名に対して介護士もしくは看護師1名の配置基準がありますが、3:1を2.5:1にしたり、2:1にしたりと差別化を図る高齢者施設もあります。
[東京都杉並区在住79歳女性のケース]
杉並区のBさん(79歳女性)は、2年前に旦那さんを亡くし、以後は戸建の自宅で愛犬と穏やかに暮らしていました。
2人の息子さんも同じ区内でそれぞれ家庭を築いていましたが、一人暮らしになったお母さまを気遣い、定期的に老人ホームを訪問していました。
ある時、通信販売で買ったものの開封されていない荷物が溜まっているのに気づきます。
日を増すごとに増えているのを不審に思い地域包括支援センターに相談しました。
受診を勧められ物忘れ外来へお母さまを連れて行ったところ、認知症を発症していることが判明しました。
幸いにも物忘れが強かったとはいえ他に問題はみられませんでしたが、一人にしておくのは不安と感じられていました。
しかしながら同居も難しいという事情もあるため、ご兄弟で話し合い、有料老人ホームへ入居してもらうことにしました。
Bさんが暮らしていた自宅を売却して売却資金を入居一時金と当面の利用料に充てることにし、施設を探したそうです。
長男はご自宅の近くに介護付き有料老人ホームがあったのを思い出し見学に行かれました。
利用料金は高いですが、施設の設備も充実しており、人員配置も手厚く、お母さまに満足してもらえるだろうと判断し、ご入居を決定されました。
入居当初こそ満足していたBさんでしたが、ひと月もすると引っ越したいと言い出しました。
Bさんは認知症ではありましたが、体は元気です。
身の回りのことも自分で出来ます。
施設がメリットとして打ち出していた、人員配置の手厚さはBさんには関係ありませんでした。
また、散歩にも出られると見学の時に聞いており、介護スタッフがBさんの要望を聞いて散歩へ連れて行ってくれると思っていたのですが実際には、
「外出はご家族が同行して行ってください」
と言われてしまい困惑されたそうです。
これも、人員配置の手厚さとは何も関係ありませんでした。
Bさんは外出したいのに外出出来ないことでストレスが溜まってしまいました。
高級有料老人ホームはそれだけの費用が払える層の人たちが集まります。
元◯◯(銀行や大手商社、官僚など)といった世間一般的にエリートと呼ばれる職種や経営者など高い地位の人も多く、入居者同士でどちらが上かといったマウントの取り合いをするご入居者も少なくありません。
Bさんはそんな日々の入居者同士のやりとりにもストレスが溜まってしまっていたのです。
こうして溜まってしまったストレスが入居者同士やスタッフとのトラブルに発展することも少なくありません。
結局Bさんも結果的に転居することになってしまいました。
値段だけで施設の良し悪しを決める事はできません。
施設側が日々、ご入居者とその家族に安心して過ごしてもらう為にたくさんの努力をしているのも事実です。
利用料などの値段も大事ですが、そこで生活する本人と施設(スタッフ・他入居者)との相性も施設を選ぶ上で最大のファクターとなります。
老人ホームは安かろう悪かろうと言われることがあります。
残念ながらそのような旧体質の施設があることも事実です。
しかし、こうしたことは値段だけではなく相性の問題が大きく左右することも頭の片隅に置いてみてください。
ご入居者と施設の相性が良ければ、安くて良い施設になります。
逆に、相性が合わなければ料金は高いのになんだこの施設は、最悪じゃないか!
となってしまうのです。
老人ホームは限られたスペースにたくさんのご入居者が共同生活を行う場所です。
縁あってご入居した他人同士が互いに気を使い、時に協力して生活していかなければなりません。
施設選びの際には「値段よりも本人との相性」ということも頭にいれておいて欲しいと思います。
無料相談ではご自身で選んだ施設選びが失敗してしまい、転居を検討されているご家族さまからのご相談も多く入ってきます。
私たちはこれまでの経験や体験をベースに、ご家族さまからお話を伺うことで最適な施設選びのプランを作ってきました。
施設選びで迷われていたり、何をすればよいのか分からないといったお悩みがあるご家族さまはお気軽にご相談ください。