※相談事例は全てご相談者さまの了承を得て記事化しております。
下目黒に50年住んでいたご夫婦
以前にご紹介したご家族さまから老人ホームへの入居を検討しているご夫婦がいるので相談にのってもらいたい、というご連絡をいただきました。
お名前とご連絡先電話番号をいただきご連絡をすると下目黒のご自宅でお話を伺いたいということでした。
下目黒とは目黒駅から目黒通り沿いに学芸大学駅までのエリアであり大鳥神社をはじめとし神社仏閣が残る懐かしい感じのする土地柄です。
デイホームなども数多く存在し人口に対する高齢者比率が目黒の中で高いエリアでもあります。
ご紹介されたご夫婦はそんな閑静な住宅街に50年住まわれていました。
ご夫婦に出迎えていただき早速、ヒアリングを開始いたしました。
ご夫婦は共に自立しておりご主人さま、奥さま共に80代半ばでした。
日々の炊事、洗濯などは奥さまが行っておりゴミ出しなどはご主人さまが行っています。
1か月に1度かかりつけ医のところで定期検診を受けてはいますが特に大きな病気もなく歩行器なども使用しておりません。
ご主人さまは長年勤務されていた会社を65歳で退職後、再雇用制度を使い70歳まで働いてきました。
再雇用が終了してからは、近くのデイサービスなどでご入居者さまと囲碁を楽しむなどボランティア活動をしていましたが80歳半ばになり、歩いてデイサービスまで行くのが辛くなってきたことからボランティアを断念しました。
奥さまは過去に介護福祉士として訪問介護をされており、今はその時に知り合った介護仲間と週に1回ほどお茶をすることを楽しみにされています。
家族に老後の心配をかけたくない
ヒアリングで最初に伺ったのは「なぜ老人ホームへの入居をご検討されているのか」でした。
奥さまは介護のスペシャリストであり訪問介護を熟知しています。
在宅介護についても豊富な知識を持っており、老々介護についても問題ない経験を持っていたからです。
ご質問に対して奥さまは、
「家族に迷惑をかけたくないのです。仕事として介護に携わってきたからこそ元気なうちに老人ホームに入りたいのです。家族に負担をかけず最後まで元気なお父さん、お母さんのイメージを残したまま天国に行きたいのです。」
と仰いました。
高齢者が元気なうちに老人ホームに入居するという流れはこの10年でおよそ倍以上になっています。※当社データによります。
次に相談員として素朴な疑問についてご質問しました。
相談員「介護業界にいらっしゃったのであればご自身で入居先を探すことが出来たのではないでしょうか。ご自身で老人ホームを探す方がご納得がいく施設を選べると思うのですが?」
奥さまはこの問いに対して、
「介護福祉士としてたくさんの訪問介護を頑張ってきましたが施設についての良し悪しはほとんど分からないのです。施設選びについて私は専門家ではありません。だから〇〇さんに相談したら御社を紹介されました。」
「御社のホームページにある相談事例をいくつも拝見してここなら信用できると思ってご相談しました。よろしくお願いしますね。」
元同業の大先輩からそんなお言葉をいただきとてもうれしかったです。
雑談形式で簡単なご入居理由を伺ったのち、現在のADL(日常生活動作)についてお伺いしました。
【旦那さま:80歳半ば】
食事:普通食(通常食)
歩行:自立
排泄:自立
更衣:自立
義歯:上下義歯
認知症:なし
【奥さま:80歳半ば】
食事:普通食(通常食)
歩行:自立
排泄:自立
更衣:自立
義歯:なし
認知症:なし
※年齢については非公開ということで記事承諾を得ているため「半ば」と表記しております。
住宅型有料老人ホームかサ高住か
現在のADL(日常生活動作)がわかりましたのでご入居における必須、充分条件を伺います。
◆必須条件
・一時入居金は安ければ安いほど良い
・夫婦別部屋にしてほしい
◆充分条件
・看取り可能であれば良いが無くても良い
・再雇用などを積極的に雇用している施設が良い
※一時入居金や月額利用料金について具体的なご予算を頂いておりますが非公開でお願いします、とのことなので割愛いたします。
ご夫婦は共に自立しているため介護付き有料老人ホームである必要はありません。
また、奥さまから看護師が常駐している必要もないという条件をいただいております。
ご入居条件をいただき今回は住宅型有料老人ホームかサ高住が好ましいと考えました。
※各老人ホームの良い点、考慮点については別紙「施設の種類」にて詳しく説明しております。
どちらも自立している高齢者が入居する施設として人気があります。
特に「住宅型」は入居率が高く、都内では満床のところも多いです。
今回のポイントしては空き部屋が確保できるかであると考えました。
近年、サ高住が増えているため入居難易度は高くはありませんが人気のサ高住はやはり満床で待ちが出ていたりします。
住宅型有料老人ホームも同様です。
どちらも自立している高齢者を対象に受入れをしており、入居条件は施設ごとに大きく異なるため施設ごとの入居条件をしっかりと分析しなければなりません。
必須条件で特殊なところはありませんので、満足度を高めるために考えなければならないのは充分条件である「看取り可能であれば良いが無くても良い」と「再雇用などを積極的に雇用している施設が良い」になります。
エリア条件がありませんのでキャンペーンで入居金が安くなっていたり、0円キャンペーンを実施中の施設を念頭に人気のあるサ高住、住宅型老人ホームを選別していきます。
頂いた条件を持ち帰り老人ホーム探しとリスト作りを開始いたしました。
外部介護サービス利用の考え方
サ高住、住宅型有料老人ホームは自立している高齢者の受入れを主目的としている老人ホームです。
※サービス形態が増えて要介護度が高い方の受入れをしている施設もあります。
ただ、介護が必要な場合は在宅介護と同じように介護保険適用の居宅サービスを利用することができます。
長く住むことでADLが下がり、排泄介助など身体介助が必要な場合は外部の介護サービスを追加して利用することが出来ます。
入居している施設で身体介護が必要になった場合、近隣の介護サービスや併設している介護事業所のサービスを利用することで継続的に施設での生活が可能となります。
外部サービスの利用には費用は別途かかります。
この点が介護付き有料老人ホームや特養とは大きく異なります。
長年運営されてきた住宅型有料老人ホームなどでは、常勤(正社員)として長年その施設で働いてきた年配のベテランスタッフが定年退職した後、嘱託スタッフとして再雇用され実質的に同じ施設で継続的に働く環境が作られています。
そのような施設のメリットは常勤として介護を行ってきた介護士が定年後も同じ施設で仕事をしているためスタッフとご入居者さまの関係値が高い点でしょう。
勝手知ったるスタッフがいつもいる状態を作ることでリラックスした生活を送ることが出来ます。
これは充分条件にあった「再雇用などを積極的に雇用している施設が良い」をクリアしています。
大手では囲い込みがしっかりしており働いていた介護士の分母が広いためこのような施設がいくつも存在しています。
もちろん大手だけではなく住宅型やサ高住が提携している介護サービス事業者は他社で定年を迎えた介護士なども多く在籍しているため、大手の介護付き有料老人ホームに比べてベテランスタッフ率が高い傾向があります。
奥さまはこの辺を熟知されていたので充分条件とされたのだと思っています。
リストが出来上がったので見学の段取りを決めるためのお打ち合わせをお願いしました。
サ高住と住宅型有料老人ホームの違いとは
見学のお話をする前に、介護の裏側について少し補足します。
今回、当社はご提案する施設としてサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)と住宅型有料老人ホームを選択しました。
ご利用する上で、サ高住と住宅型老人ホームに大きな違いはありません。
サ高住は元々、国土交通省の管轄でした。
介護業界への参入障壁が下がったことで、高齢者社会の需要を見越した別業種の株式会社や有限会社などが介護業界に進出してきました。
国土交通省管轄であるため、進出してくる業界は不動産業種が多かったですが一般の企業でも参入可能です。
当時は、高齢者に住宅を貸し出すという点だけをクローズアップしたためバリアフリーの住宅を作り、高齢者住宅として運営していた企業もありました。
今では考えられませんがそんな時期もあったのです。
特徴的な例として、施設であれば当たり前のように設置されるヘルパーステーションなどが設置されていないなど、介護業界に携わっているものとして考えられないようなサ高住もあったりしました。
また、介護運営実績が全く無い別業種の企業が一気に進出したため、サービスレベルに大きな違いがあったりもしました。
しかし長い月日がたちサービスレベルの低い施設は閉鎖になるなど淘汰されてしまいました。
今残っているサ高住はどこもノウハウを持っています。
尚、現在はサ高住も厚生労働省管轄です。
一方、住宅型有料老人ホームは管轄が厚生労働省ですから介護企業が運営をしています。
介護付き有料老人ホームを運営している介護会社が自立している高齢者向けに住宅型有料老人ホームを建設するなどにより増えてきました。
背景はそれぞれ全く異なりますが、どちらも受けることが出来るサービスに大きな違いは無く、身体介護に関しては外部サービスを利用することになります。
老人ホーム見学で奥さまが見ていたこととは
話を戻しましょう。
相談員として下目黒を中心に目黒区と世田谷区及び大田区まで手を伸ばしてリストを作成しました。
広範囲に広がったのは、人気のある老人ホームで「空き」がある居室を持っているサ高住や住宅型有料老人ホームを中心に選別を行ったからです。
当社では業界の噂について常にレーダーを張り巡らせています。
施設状況は目まぐるしく変化するため最新の情報を入手しなければ満足のいく施設をご提案できないからです。
表面上の口コミで人気があるということだけではなく、業界人から一目置かれるような施設も人気のある施設として選別基準となります。
各施設の特徴などをご説明すると、リストから3施設が見学対象となりました。
早速、先方に見学依頼を出し日程調整を行います。
3つの施設を見学した後、ご自宅で見学の感想をいただくお時間をいただきました。
感想について簡単にまとめました。
A施設:住宅型有料老人ホーム
>「施設長が若い方でハキハキと話されており好感が持てました。私たちへの接し方を見て長いこと介護をやってきた方だとすぐにわかりました。
ただ、私たちが質問しても認知症の高齢者を扱うような感じがしたことは残念です。現場のスタッフがとても良い感じだけに残念ですね。」
B施設:サ高住
>「人気のある理由はのびのびとした環境だからだと思いました。良い施設だと思います。皆さんのびのびとしているのがわかりました。
ここに入ったらきっと楽しいのでしょうね。自立の方が多いからでしょうね。要介護度が高い方はほとんどいないんでしょうか。」
C施設:住宅型有料老人ホーム
>「今日見た中では一番良いと思いました。年齢が近いベテランさんが多いからそう感じたんですかね?スタッフの方と友達みたいに話しているのを見て皆さん、安心して生活しているんだなと感じました。」
奥さまの感想は見学をする上で見るべきポイントを的確にとらえています。
感想の全てが、そこで働いているスタッフと施設の在り方なのです。
施設の新しさやアクティビティなどよりも、現場で働いている介護人材の質を重視した見学を行っていることがわかります。
これは老人ホーム選びをする上でとても大切なことです。
老人ホームに入居後でトラブルになる大きな理由はアクティビティの質や食事の豪華さなど物理的なサービスよりも、そこで働くスタッフの対応に関することが圧倒的に多いのです。
パンフレットにのっているサービスを比較するのではなく、そこで働いているスタッフの資質を確認することが見学で一番大切なことなのです。
介護業界で長年、辣腕を振るってきた奥さまだからこその視点です。
見学におけるポイントとしてスタッフ、施設長の人柄やサービスを確認することは是非、参考にしていただきたいと思います。
最終的に決定した老人ホームとは
感想をお伺いした後、1週間ほどして奥さまからお電話をいただきました。
今回ご案内した3施設の中で気に入ったところがあったので入居手続きをお願いしたいとのことでした。
ご夫婦が決定された施設はC施設でした。
決定理由は現場スタッフとご入居者さまの距離感でした。また、介護スタッフが真摯にご入居者さまと向き合っていると感じられた、からだそうです。
ちなみに今回は承諾を得て、他の施設がなぜ候補落ちしてしまったのかについても伺うことが出来ましたのでご紹介いたします。
A施設:住宅型有料老人ホーム
施設長が高齢者を一様に見ている感じがした。認知症の高齢者もいればそうではない高齢者もいる。
本来であればそういった高齢者に対してその人ごとに対応や話し方を変えなければならないのに、施設のトップが「高齢者」をひとくくりにしたように感じられた、とのことでした。
B施設:サ高住
全体的に良かったと思ったけれどもコンシェルジュという方が介護士ではなかったこと、介護度が高くなった時の予算計算をしたところ介護付き有料老人ホームと同じくらいに高くなってしまうので予算オーバーになる可能性がある、とのことでした。
また、スタッフが見学が来るときの態度と通常業務時で態度が違うような気がする、ということも仰っていました。
空き室をすぐに抑えることが出来たため、ご入居手続きはスムーズに進みました。
私は担当者として、ご入居日に施設前でご挨拶に伺いました。
その時に奥さまが笑顔でこんな話をしてくださいました。
「今回は素敵なところをご紹介していただいてありがとうございます。私たちも今後は介護される側になるんですね。
それとね、実はこの年になって掃除や洗濯、お料理とかが億劫になってしまってたの。あと何年生きられるかわからないし、少し贅沢してもいいわよね。」
介護の大先輩がおちゃめな笑顔で話されたことにこの仕事の面白さを改めて実感しました。
最近では自立されている高齢者さまからのご相談も多くなっております。
老人ホーム選びに迷われている方は以下より、ご相談フォームまでご連絡ください。
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