※相談事例は全てご相談者さまの了承を得て記事化しております。
戸塚で認知症のご夫婦
LINE相談窓口に入った一本のご相談です。
ご相談者さまは娘さまでご両親を老人ホームにお願いしたいという内容でした。
ヒアリングで現状をお伺いました。
【お父さま:88歳】
食事:普通食(通常食)
歩行:杖歩行
排泄:一部介助
更衣:一部介助
義歯:上下義歯
認知症:アリ
介護度:要介護1
【お母さま:82歳】
食事:普通食(通常食)
歩行:自立
排泄:自立
更衣:自立
義歯:ナシ
認知症:アリ
介護度:要支援1
お父さまは以前に骨折した影響で杖歩行となっていました。
排泄や更衣に関しては奥さまが一部介助を行っております。
認知症を発症しておりますが会話が出来ないほどではなく、短期記憶の低下、若干の見当識障害があります。
お母さまは要支援1で認知症を発症しておりお父さまと同じく短期記憶の低下があります。
娘さまはご夫婦で認知症を発症しているご両親が実家で安心して暮らせるのか心配していました。
娘さまは世田谷区の祖師谷にお住いで何かあったと連絡されても駆けつけるまでに1時間以上かかってしまいます。
今はよくとも今後、徘徊などが出てくると面倒が看れないため、老人ホームに入居して安全な環境を担保したいと考えておられました。
そこでご両親に老人ホームへの入居をご提案されていました。
しかしそこで思わぬ事態が発生してしまいました。
夫婦で一緒の老人ホームは嫌
娘さまはお父さまに老人ホーム入居のお話をされました。
お父さまはご自身の排泄をお母さまにお願いしなければならないことについて引け目を感じており、老人ホーム入居について前向きな回答をされていました。
次にお母さまにも同じように老人ホームでのんびり過ごしてほしいとお話をされました。
お母さまは少し考えた後に、条件付きでOKという回答をされたそうです。
娘さまは世田谷区でご夫婦部屋がある老人ホームで夫婦仲良く生活をしていただきたいと思っていました。
いわゆる「呼び寄せ」をすることで何かあってもすぐに駆け付けられる環境を重んじたのです。
ところがお母さまの条件を聞いて驚かれました。
お母さまは、お父さまと一緒の老人ホームでなければ入居すると言われたそうです。
娘さまはなぜお母さまがそのような発言をされたのか不思議だったので理由を聞かれました。
すると、お母さまはこういわれたそうです。
お母さま「いままで60年も一緒に暮らしてきたのよ。もう充分でしょ。最後は私も自分の好きなことをしたいわよ。老人ホームに入るならお父さんのことを考えたくないの。」
娘さまはお母さまの条件を受け入れることしました。
しかし、実際にどのようにすればよいか分からず当社の無料相談にご連絡をされました。
別々の老人ホームを探す前に
現況をお伺いし老人ホーム探しを始める前にいくつかご質問をいたしました。
【1】施設の場所はどこを希望されていますか?
【2】ご夫婦の施設はお互い近いところにされますか?
【3】2つの施設は一緒の運営会社が希望ですか?
【4】入居時期は一緒もしくは同じようなタイミングとなりますか?
【5】ご実家は売却されますか?
【6】要介護が低下した場合に特養などへの転居を考えていますか?
娘さまから2日後に回答を頂けました。原文の掲載は控えたいので要約を下記いたします。
【1】施設の場所はどこを希望されていますか?
>娘さまのご自宅がある祖師谷か車で30分程度圏内
【2】ご夫婦の施設はお互い近いところにされますか?
>面会が楽なので、できれば近いほうが良い。
【3】2つの施設は一緒の運営会社が希望ですか?
>特に考えていない。ADLが下がって転居することになり一緒の施設になるのは避けたい。
【4】入居時期は一緒もしくは同じようなタイミングとなりますか?
>同じタイミングだと楽だが必ずしも一緒である必要は無い。
【5】ご実家は売却されますか?
>弟夫婦が代わりに住むので売却は考えていない。
【6】要介護が低下した場合に特養などへの転居を考えていますか?
>特養に入ることで費用が抑えられるならそうしたい。
以上の回答を頂き老人ホーム探しをスタートしました。
今回、入居相談員として以下のプランをたてました。
計画書※一部抜粋
・施設はご夫婦共に祖師谷の近く、または各施設間の移動時間が20分以内 ※時間は公共の交通機関での計算値
・お父さまには介護付き有料老人ホーム、お母さまにはサ高住、住宅型有料老人ホーム、介護付き有料老人ホームを中心とした施設探し
・入居タイミングはできるだけ合わせるようにするが難しければ訪問介護やデイサービスなどを提案し見守り強化
※尚、タイミングが合わない場合はお父さまの入居を優先。
・要介護度の低下を考慮しながら特養への申し込み手続き
・外出に関する規制などをご両親に事前説明する
計画書と併せて施設の必須、充分条件を伺います。
◆必須条件
・一時入居金:800万円※
・月額利用料:45万円以内※
・看取り対応
・祖師谷近郊又は世田谷区内
・特養への順番待ち
※一時入居金はお二人の合計金額
※月額利用料はお二人の合計金額
◆充分条件
・お母さまについては自由外出
ご提案リストの作成
まずお父さまのご入居提案先を作ります。
お父さまは大柄で体重は70キロ程ありました。
力も強く、認知症が進行して暴言、暴力などに発展する可能性も考慮しなければなりません。
稀にあるのですが大柄な高齢者を理由に受入が拒否されることがあります。
介護スタッフの腰を痛めてしまうなどが原因です。
また、ご自身でベッドから起きられなくなったりするとスライディングボード(介護器具)を使うなども可能ですが、大柄なご入居者が入ることで二人介助になったりすることを懸念して受入に慎重になる場合もあります。
施設選びでは大柄なお父さまでも問題なくケアが出来る施設を選ばなければなりません。
これには、男性が多い施設等を検討する意味もあります。
最新の施設情報を調べ、リストを作成しました。
次に、お母さまのご入居先としてリストを作成します。
お母さまも入居したら看取りまでということでしたのでその条件を満たしている施設選びが必要になります。
現在、ほとんど自立している関係から住宅型有料老人ホームで料金を抑え、介護が必要になったら追加をするというのが適切と考えました。
お父さまの施設見学
ご両親のリストが完成しましたので娘さまにご提案をすると、お父さまで2施設、お母さまで3施設の見学依頼を頂くことが出来ました。
まずお父さまの施設から見学を行いました。
どちらも介護付き有料老人ホームとなり見学後に感想を頂きました。
娘さま「A施設もB施設も男性の職員さんが多いんですね。男性が多いところを選んだんですか?そうであればありがとうございます。父はあの時代にしては大柄なので介護する人が大変ですものね。」
娘さま「A施設は食堂がキレイでした。それから職員さんが丁寧な感じがしました。場所も祖師谷から近いですね。」
娘さま「B施設はお部屋がすごく気に入りました。父は日当たりの良いお部屋が好きだと思うのでお部屋は満点です。ベテラン女性が大声でテキパキ指示を出していたのが印象的でした。あの方が現場のトップなんですかね。」
娘さまは見学した施設について少し考えます、と回答されました。
お母さまの施設見学
次にお母さまの施設を見学に行きました。
3施設の見学後に娘さまから感想を頂きました。
ちなみに施設形態は以下となります。
施設1:住宅型有料老人ホーム
施設2:サ高住
施設3:介護付き有料老人ホーム
娘さま「施設1気に入りました。とってもきれいでまだ新しい感じがしました。元気な利用者さんがたくさんいたので母もここなら楽しく過ごせるような気がします。」
娘さま「施設2は他よりも少し安いんですよね。費用で考えるならここかなと思いました。気になるところはあんまりなかったですけど、職員さんがあんまりいないような気がしました。」
娘さま「施設3は父の時に行った老人ホームと同じ種類ですよね。母は自立しているのでどうかなと思いました。でも介護が必要になった時のことを考えればここがいいんですかね。」
前回と同様に少し考えますとお話されました。
娘さまの決断された施設と入居時期
結論から申し上げます。
お父さまとお母さまは2週間ほどのズレでご入居することが出来ました。
娘さまが決断された施設は以下となります。
お父さま:A施設
お母さま:施設1
【お父さまの施設を選んだ理由】
消去法でした。どちらも男性が多くどちらかに決めようと考えていた。費用も同じくらいだったので見学の時に感じた印象で決めた。
B施設はベテラン職員さんが全てを仕切ってるように感じました。ネットではベテラン職員さんが理由で辞める職員さんがあることを知りA施設にしました。
利用者さんの前でもあれだけ他の職員さんに指示を出すということはそれが嫌いな人は辞めてしまうだろうと思いました。
【お母さまの施設を選んだ理由】
費用で考えるなら施設2だったんですが、他の施設に比べて職員さんの数が少ないところが気になりました。
施設3は母と同じような利用者さんがあまりいなかったので母が浮いてしまうと思いました。
施設1は母と同じような利用者さんが多かったので友達が出来るだろうなと思ったので選びました。
お父さまとお母さまのご入居手続きについてサポートを行いました。
入居時期が近寄っていたことからやるべきことが多く大変な作業でしたがなんとか無事に契約まで完了しました。
さて先ほどの計画書で少しだけ触れましたが、お父さまとお母さまに事前に伝えておかなければならないことがあります。
短期記憶の低下があるためどこまで記憶していただけるか分かりませんが説明しておかなければならないことです。
それは、外出に関する規制です。
認知症を発症しており短期記憶が低下しているご両親はどちらの施設においても自由外出はできません。
※自由外出とはご自身で施設許可を得ずに外出すること。
外出規制の説明の重要性
老人ホームのイメージとして皆さまが誤解されているのが、施設に入ったら外出が難しい、ということではないでしょうか。
しかしほとんどの施設において外出、外泊は自由です。
ただし、ルールがあります。
ルールは施設がお預かりしているご入居者さまの安全を守るために設定されているものです。
このルールが独り歩きしてしまい一般的に老人ホーム=出られないというイメージになっていると思います。
ルールは各施設ごとに異なりますが共通するルールもあります。それが、
認知症のご入居者さまは家族の付き添い又は職員の同行が無ければ外出できない
ということです。
お父さまもお母さまも認知症を発症しております。
そのため、ご自身のみでの外出は許可されませんでした。
このことをしっかりとご両親に説明しなければなりません。
入居相談員として外出制限や携帯電話の利用について説明をいたしました。
その場ではしっかりと理解をされているとわかりましたが、明日になったら忘れてしまうかもしれません。
そのため、老人ホームでの生活について、という簡単な冊子を作り娘さまにお渡しいたしました。
ご入居後、居室のドアの内側やテーブルに置くようにしてください、と娘さまにお伝えしました。
なぜそこまでするのか?
と、思われる方もいらっしゃると思います。
このような対応をすることでいくらかではありますが帰宅願望を少なくすることが出来るのです。
お父さまもお母さまも短期記憶が低下してはいますが、娘さまと普通に会話が出来ます。
このような場合、1週間ほど(早い方だと当日)で帰宅願望が出始めます。
入居したばかりのご両親にとって帰るべき家は戸塚のご実家なのです。
施設はホテルと変わらない認識なのです。
従って、帰りたくなったらご実家に帰るという選択をします。
帰れなくなると帰宅願望はどんどん強くなります。
施設に慣れてくると帰宅願望が弱くなってきますが、それまではかなり強い帰宅願望が出ることが予想されます。
慣れてくるとは諦める事とは違います。
施設が今のご自身の家なのだと認識することが慣れてくるの意味なのです。
特にお母さまに関しては自立しており病識も無いことから、ご自身の自由が認められないことに強い拒否反応が出ることが予想されます。
なんとか自由外出が出来ないか模索しましたが充分条件をクリアすることはできませんでした。
娘さまには計画書をお渡しした時点から帰宅願望についてご説明をしていました。
施設も入居後の帰宅願望についての対処法を熟知しています。
施設から帰宅願望についてのお話がでたら、施設の指示に従ってください、とお伝えしました。
併せて過去の経験から、帰宅願望が出始めると携帯電話で時間構わず娘さまに電話がかかる可能性があることもお伝えしました。
施設側から携帯電話に関するお話が出るかもしれませんがその時はできるだけ施設の指示に従ってくださいともお伝えしました。
施設側は帰宅願望を抑えるために最大の努力をしてくれます。
しかし、最終的に帰宅願望が収まらず、暴言や暴力などに向かってしまうと退居になってしまう場合があります。
特に大柄なお父さまの場合、暴力や暴言が頻回すると介護職員の安全担保の理由から退居勧告が出やすいのです。
職員が安全に働ける環境を整えることは施設運営にとってとても重要なことなのです。
特に、人材不足が深刻化している介護業界において職員をないがしろにする施設はすぐに話題になり退職率が高まり求人も難しくなってしまうのです。
老人ホームのご入居を検討されている皆さまにおかれましてはこうした老人ホームのルールについても調べられることをお勧めします。
当社では老人ホームのご入居相談窓口を設置しております。
ご利用についていかなる場合においても費用が発生することはございません。
また、必要であれば計画書や、冊子などを作るなどのサポートも行っております。
老人ホームのご入居を検討されている方は介護資格を持つ入居相談員までご連絡を頂ければ幸いです。
ご相談はフォームへのご入力または、LINE公式アカウントにて行うことが可能です。
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